妻に先越される
文字数 581文字
アブラハムの死後、物語はイサクの話へと移っていきますが、ここで彼と妻のリベカを対比して読むと面白いです。
イサクはリベカとの間になかなか子どもができないので、妻が身ごもるよう神様に祈ります。すると、神様はその祈りを聞いて双子の子どもを与えますが、祈ったイサクにではなく、リベカの方にお告げをします。
「二つの国民があなたの胎内に宿っており、
二つの民があなたの腹の内で分かれ争っている。
一つの民が他の民より強くなり、
兄が弟に仕えるようになる」
そう……一族の将来にかかわる、かなり重要な話を先に妻の方へするんです。実は、聖書の中で夫婦がお告げを受けるとき、夫は何も聞かないで妻だけが神様から語りかけられる……というのはよく出てきます。
ついでに言うと、リベカは最初、神様の言葉を直接聞いていないのに、アブラハムの使いから主人の仕える神様の話を聞いてすぐ信じます。イサクの所へ嫁ぐときも、すぐ父の家を離れて旅立ちます。
「信仰の父」と呼ばれるアブラハムは神様から「あなたは生まれ故郷、父の家を離れて、わたしが示す地に行きなさい」と言われた後「すぐ」従いましたが、リベカは直接神様の言葉を聞いてもいないのに「すぐ」従います。
問題だらけだったアブラハム、その後継者として次に選ばれた人間は本当に息子イサクだったのか……? 実はリベカじゃ? と思わせられる興味深い話です。