第38話 愛は幻想。恋も幻想。現実は欲望。
文字数 644文字
愛は幻想なのか。欲望にまみれた人間の本質を覆いかくすための美辞麗句なのか。巧みに美しく飾った言葉は時として刃物のように胸を深くえぐる。
ウルフは床を見つめたまま、ぽつりとつぶやいた。
「わるかった。おれは……」
「出て行って」
わたしの言葉に、ウルフが驚いたように顔をあげた。そして、なにか言おうとして口を開いたが、わたしはそれを遮って言った。
「出ていって!」
言ったというよりも、叫んでいた。
謝ってほしくなかった。好きじゃないのにやってしまったのだと、詫びてほしくなかった。
彼はわたしの剣幕に驚いたのか、慌ててスラックスのベルトを締め、大股でドアに向かった。
そして、ドアを開ける前に肩越しに振り返って、またなにか言おうとする。黒い瞳はいつになく怯え、後悔の色に染まっていた。
「お願いだから、もう行って。もう、二度と会わないから」
わたしは彼との会話を拒否した。シャットダウン。金輪際、彼の存在を拒否する。
ウルフが歯を食いしばったのが見えた。頬から首につながる筋が浮かび上がっている。
そして、ドアを開け、彼は出て行った。
わたしはベッドの上から半身を起こした格好のまま、ドアを見つめた。
そして、ベッドから飛び降りて走り、ドアに鍵をかけた。
しばらくの間ドアの向こうにあった気配はエレベーターが下降する音とともに消えた。
求めたのはわたしだ。いや、ふたりともか。
いずれにしても、ふたりとも後悔して終わった。
この恋はもう、終わり。
終わりにする。
わたしは、固く決意した。
ウルフは床を見つめたまま、ぽつりとつぶやいた。
「わるかった。おれは……」
「出て行って」
わたしの言葉に、ウルフが驚いたように顔をあげた。そして、なにか言おうとして口を開いたが、わたしはそれを遮って言った。
「出ていって!」
言ったというよりも、叫んでいた。
謝ってほしくなかった。好きじゃないのにやってしまったのだと、詫びてほしくなかった。
彼はわたしの剣幕に驚いたのか、慌ててスラックスのベルトを締め、大股でドアに向かった。
そして、ドアを開ける前に肩越しに振り返って、またなにか言おうとする。黒い瞳はいつになく怯え、後悔の色に染まっていた。
「お願いだから、もう行って。もう、二度と会わないから」
わたしは彼との会話を拒否した。シャットダウン。金輪際、彼の存在を拒否する。
ウルフが歯を食いしばったのが見えた。頬から首につながる筋が浮かび上がっている。
そして、ドアを開け、彼は出て行った。
わたしはベッドの上から半身を起こした格好のまま、ドアを見つめた。
そして、ベッドから飛び降りて走り、ドアに鍵をかけた。
しばらくの間ドアの向こうにあった気配はエレベーターが下降する音とともに消えた。
求めたのはわたしだ。いや、ふたりともか。
いずれにしても、ふたりとも後悔して終わった。
この恋はもう、終わり。
終わりにする。
わたしは、固く決意した。