第42話

文字数 297文字

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 若菜が死んだ時、僕は若菜が死んだということを受け止められなかった。今だってそうだ。若菜が亡くなったことは分かっている。若菜がもういないという事実がここにあって、その事実を抱えて今日まで生きて来たに過ぎない。「私は死んだ」と若菜が僕に告げたことなど一度もない。当然だ。若菜は死んだのだから。僕は若菜が死んだと信じたことも一度もない。それは、若菜は死んでいないと意地を張っているというのではなく、「死」と「信じる」ということが結びついたことがないからだ。
「僕はもう死んでいる」とスティービーは言った。そのことを信じる必要が僕にはあると言った。ただそれだけを望むと。ここにある事実はそれだけだ。
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