第39話

文字数 1,128文字

「ミホ!」
「ほいさ!」
「君達がついていた小隊を壊滅させたのはあの魔龍か?」

 ジークは、遠方のヨハンを指さし、ミホに問う。

「多分そうだと思う! 緑のブレスって、あまり見ないし!」
「能力は分かるか? 魔龍は特異な能力を有すると聞くが」
「分からない! あっという間に防壁を突破していったから。すんごい爆発だけ見たけど」
「わかった。能力は分からないが、飛び道具には十分警戒をした方がよさそうだ!」
「おっけ!」
「了解~」

 ユキヅキはジークの評価を改めていた。

「これで自然に注意喚起はできた。後はどれくらい“やる”かだが……」
“あれが相手では、ファンタズマ回収は必須だな……ジーク!”
「わかってる。その為にここに来た……散開っ!」

 緑色の閃光がジークの小隊を襲う。全員が回避をしたが、すぐに次のブレスが飛んでくる。

「この距離からかっ! 全体、回避行動を取りながら奴に近づく! 射程内までっ!」
「了解!」

 魔龍ヨハンは、黒い外殻を持つ魔龍だ。四本の逆角や、爪、剣尾の先端は翡翠色のグラデーションで彩られている。エメラルド色に燃え上がる翼膜は他の魔龍と同様に、燃え続けながら生え変わり続けるように、煌めいていた。

「小賢しい」

 そしてヨハンは、身体からブレスエネルギーを発生させる。それらのエネルギーは高密度の球体となって、ヨハンの周囲に浮遊した。そして、自らの口と、十数個にも及ぶブレス球体から一斉にブレスを撃ち出した。

「!?」

 ジーク達はそれを上手く躱す。流石に慣れてきたようだが。

“まだだっ!”

「!? まだ来る!!」

 ジークは“とりあえず”でイオが言う内容を復唱した。少しでも伝わってくれという願いを込めて。だがその願いが届いたのは知った顔だけだった。

 ヨハンが放ったブレスが曲がった。撃ち出されながらコースを変えるように曲がるブレスと、撃ち出されて伸びきった最中に折れるように曲がるブレスの二種類が混在しており、回避は至難の業であった。

 緑の閃光によるシャワーが晴れて、残ったのは四人だけだった。
「無事か!」
「なんとか!」
「だいじぶ~」
「問題ありません」
「残ったのは俺達だけか……なら!」

 ジークは飛び出した。ヨハンを避けるようにして迂回して、隊舎へと向かう。

「俺は荷物を取りに行く! 君達は足止めを頼む!」
「ちょ、ちょっとぉ!」

 ミホが不服そうに追いかけようとする。しかしユキヅキに阻まれる。

「どいて」
「ダメです。ジークがファンタズマを使う以外、あの魔龍は倒せません!」
「……」
「……」
「わかったよ! しゃーない! 腹くくるか!」
「ありがとうございます」
「別に、今度焼肉驕ってね」
「私も~」
「わかりました……三方向から囲むように牽制しましょう。目と羽を狙います!」
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