第73話
文字数 1,478文字
「スレイっ!」
割って入ったのはユキヅキだった。スレイの顔面に左ストレートが炸裂する。
「いい加減にしなさいっ! 今ここで仲間割れしたら……!」
「五月蠅いっ!」
スレイはユキヅキにも襲い掛かった。接近戦をサーベルで捌くユキヅキは、チャージ・ブレス・ライフルのチャージを開始した。
「!?」
それは明らかに悪手であった。チャージ・ブレス・ライフルは、溜めた時間の分だけ、撃発までの猶予がある。例えば三秒溜めれば、溜め完了から三秒以内に発射しなければライフルそのものが爆発する。
その危険性が“縛り”になって、龍の外殻を一撃で貫く威力のチャージ弾を放つことができるのだ。
だがこの閉所で、スレイ相手にチャージを開始するというのは自殺行為でしかない。
「ユキヅキ……邪魔しないで!」
スレイはユキヅキがチャージを終えた瞬間を狙って斬りかかる。縦振りをユキヅキがサーベルで受け止めるが、身の丈程もあるライフルの銃身が長すぎて、鍔迫り合いをする距離ではスレイを銃口の先に捉えることができない。
「ユキヅキ!」
俺は援護に入ろうとするが、ライフルは既に撃発せずに行き場を失ったエネルギーが爆発を起こそうとしている。
「まだよ」
その瞬間、ユキヅキはライフルを振り上げた。ちょうど、スレイの縦斬りを抑えるために横に向けているブレス・サーベルと重なるように。
当然、ライフルは切断される。
「!?」
そして銃身を短く切断したライフルで、スレイの顔面を狙って撃発した。更に撃発時、既に右手に握力をほとんど込めていない。撃った反動はライフルを離すことで逃がした。
「んのっ!」
スレイは顔面へ迫るチャージ弾を躱して、その勢いで左足から蹴りを放つ。吹き飛ばされたユキヅキに斬りかかる。
「邪魔しないでってば!」
「やめろっ!」
俺は割って入っている。コンドウは見ているだけだが、身内のいざこざには干渉しないのだろう。そして周辺を常に警戒してくれてもいる。
しかし、スレイの攻撃は俺が間に入ることを予測しているものだった。彼女の一振りはユキヅキを追ってのものではなく、俺に対してジャストミートするように準備されていた。
「何っ!?」
咄嗟のガードが容易く弾き飛ばされて、無防備な胴体に再び炎龍が迫った。
“死んだ……”
俺はそう思った。
「!?」
だが、一瞬でスレイの姿が消えていた。
「スレイ!!!!」
ユキヅキの悲鳴が一番最初。次に俺とコンドウが、同時に床に視線を送った。
「そんな……」
そこには、右上半身を欠いたスレイが倒れていた。血が噴き出し、失血の症状なのか小刻みに震えていた。
その奥に、ラインハルトが居た。
「危ない危ない。大丈夫かい? ジーク」
「どうやって……」
「ラインハルトっ!」
俺は迷わずラインハルトに斬りかかる。超高速で飛ばれると、手が付けられない。だからその前に張り付いて、行動を制限するのが目的だ。
コンドウもその戦列には加わる。彼がそういう男だというは解っていた。
「なぁジーク」
ラインハルトが話しかける。俺は無視を決め込んだ。
「どこまでが偶然だと思う?」
「……」
「偶然能力に見合わない部隊に配属されて、偶然クビになる。偶然阿保どもに目を付けられて懲戒扱いになって、偶然ユキヅキに出会う。偶然ファンタズマに適合して、偶然魔龍と戦う機会が訪れて、偶然騎士団を任された。そう思っているか?」
「全部お前の予定通りってことか?」
「いや……予言通りだ」
「予言……」
距離を取ったラインハルトは、柱の陰に隠れた。俺は伝播斬撃ブレスの用意をする。だが足音が聞こえて、攻撃を止めた。人の足音だ。
割って入ったのはユキヅキだった。スレイの顔面に左ストレートが炸裂する。
「いい加減にしなさいっ! 今ここで仲間割れしたら……!」
「五月蠅いっ!」
スレイはユキヅキにも襲い掛かった。接近戦をサーベルで捌くユキヅキは、チャージ・ブレス・ライフルのチャージを開始した。
「!?」
それは明らかに悪手であった。チャージ・ブレス・ライフルは、溜めた時間の分だけ、撃発までの猶予がある。例えば三秒溜めれば、溜め完了から三秒以内に発射しなければライフルそのものが爆発する。
その危険性が“縛り”になって、龍の外殻を一撃で貫く威力のチャージ弾を放つことができるのだ。
だがこの閉所で、スレイ相手にチャージを開始するというのは自殺行為でしかない。
「ユキヅキ……邪魔しないで!」
スレイはユキヅキがチャージを終えた瞬間を狙って斬りかかる。縦振りをユキヅキがサーベルで受け止めるが、身の丈程もあるライフルの銃身が長すぎて、鍔迫り合いをする距離ではスレイを銃口の先に捉えることができない。
「ユキヅキ!」
俺は援護に入ろうとするが、ライフルは既に撃発せずに行き場を失ったエネルギーが爆発を起こそうとしている。
「まだよ」
その瞬間、ユキヅキはライフルを振り上げた。ちょうど、スレイの縦斬りを抑えるために横に向けているブレス・サーベルと重なるように。
当然、ライフルは切断される。
「!?」
そして銃身を短く切断したライフルで、スレイの顔面を狙って撃発した。更に撃発時、既に右手に握力をほとんど込めていない。撃った反動はライフルを離すことで逃がした。
「んのっ!」
スレイは顔面へ迫るチャージ弾を躱して、その勢いで左足から蹴りを放つ。吹き飛ばされたユキヅキに斬りかかる。
「邪魔しないでってば!」
「やめろっ!」
俺は割って入っている。コンドウは見ているだけだが、身内のいざこざには干渉しないのだろう。そして周辺を常に警戒してくれてもいる。
しかし、スレイの攻撃は俺が間に入ることを予測しているものだった。彼女の一振りはユキヅキを追ってのものではなく、俺に対してジャストミートするように準備されていた。
「何っ!?」
咄嗟のガードが容易く弾き飛ばされて、無防備な胴体に再び炎龍が迫った。
“死んだ……”
俺はそう思った。
「!?」
だが、一瞬でスレイの姿が消えていた。
「スレイ!!!!」
ユキヅキの悲鳴が一番最初。次に俺とコンドウが、同時に床に視線を送った。
「そんな……」
そこには、右上半身を欠いたスレイが倒れていた。血が噴き出し、失血の症状なのか小刻みに震えていた。
その奥に、ラインハルトが居た。
「危ない危ない。大丈夫かい? ジーク」
「どうやって……」
「ラインハルトっ!」
俺は迷わずラインハルトに斬りかかる。超高速で飛ばれると、手が付けられない。だからその前に張り付いて、行動を制限するのが目的だ。
コンドウもその戦列には加わる。彼がそういう男だというは解っていた。
「なぁジーク」
ラインハルトが話しかける。俺は無視を決め込んだ。
「どこまでが偶然だと思う?」
「……」
「偶然能力に見合わない部隊に配属されて、偶然クビになる。偶然阿保どもに目を付けられて懲戒扱いになって、偶然ユキヅキに出会う。偶然ファンタズマに適合して、偶然魔龍と戦う機会が訪れて、偶然騎士団を任された。そう思っているか?」
「全部お前の予定通りってことか?」
「いや……予言通りだ」
「予言……」
距離を取ったラインハルトは、柱の陰に隠れた。俺は伝播斬撃ブレスの用意をする。だが足音が聞こえて、攻撃を止めた。人の足音だ。