第48話
文字数 1,425文字
「スレイっ!」
ジークが叫ぶ。スレイは何かを察して、ファンタズマにエネルギーを纏わせる。
「!」
ラインハルトが一瞬身構えた。ジークが放ったのは広く大きな斬撃ブレスエネルギーだった。集中して放つそれに比べて、用途は限られている。その黒いブレスエネルギーがラインハルトの左半身を襲う。しかしこの程度の速度、当たり前のように回避される。だがそれでよかった。
「あとは……頼みます」
黒いブレスエネルギーの膜を突き破って、スレイが突っ込んできた。
ラインハルトは反応が遅れた。龍伐隊十八番の目くらまし。ジークが放った攻撃で左側の視界が遮られた。そこまでは別に構わなかった。
だがラインハルトは思考してしまった。おあつらえ向きの目隠しを果たして彼女が利用するかどうかである。
結果として、ラインハルトの反応速度、飛行速度であれば“どの手”でも問題はなかった。だが瞬きの間に二撃三撃と攻撃の応酬をしてきた相手にとって、スレイ・グラディアにとって、その一瞬の隙は非常に長かった。
「遅い!」
その隙に、素直にシンプルに、目隠しを利用したスレイの渾身の袈裟切りが放たれる。ラインハルトは咄嗟に左腕からブレスエネルギーを噴出させ、ガードした。だが今まで纏っていたエネルギー体には至っておらず、不完全な防御の上からたたき込まれた必殺の一閃は、ラインハルトの腕の骨を、音を立てて折り砕く。自らのエネルギーで焼かれた赤黒い血が噴き出した。
「くっ!」
ラインハルトはその勢いを利用して反転、そのまま急加速して洋上へと消えた。
「はあ、はあ……はぁ……ふぅ」
スレイは息を整えて身構えた。一瞬で離脱できるのであれば、一瞬で戻ることも出来るだろう。
「……」
ジークも襲い来る疲労感に抗いながら、構えた。
「……」
だが音沙汰は無かった。ラインハルトとの戦闘がようやく終わったのだ。
「ありがとうジーク、助かったわ」
ジークの選択肢。それはオブジェクトになることだった。見事にはまっていた。
「いいえ……」
「でもなんで、私が一番得意なのが袈裟だってわかったの?」
「それは……」
ジークは飛びながら後ろに首が折れたかのように意識が一瞬飛んだ。
「ちょ! ジーク!?」
「すいません……戦った後、何故か寝るんです、俺……」
「意味不明!」
「袈裟は……初めて副隊長を見た時と、道場で戦った時……あまりにも綺麗だったので、印象に……」
そしてジークは昏倒した。
「ちょ、ちょっと待ちなさい! ジーク! こら寝るな!」
スレイはジークを抱きかかえて、周囲を見渡す。
「酷い……」
街は焼かれ、内地には大量の龍が残っていた。
「ジークを下ろしてから……」
「スレイ!」
そこにユキヅキが合流する。
「ユキヅキ」
「大丈夫!?」
なんとか。ラインハルトは退けたけど、ジークが気絶したわ。この子、頼めるかしら」
ユキヅキからすればジークの身が一番の優先事項だ。当然快諾する。だが、スレイは下がる気がないようだ。
「スレイも休んだ方が」
「だめよ。まだ。終わってない」
だがスレイ自身、自分の消耗度合いは理解していた。今の状態で降りれば、確実に足を引っ張ると解っていた。
「どうしよう……」
「!? スレイ!」
一粒の光が、空から落ちて来た。高速で落下するそれは、内地でブレスを吐き散らかす龍の、その頭部を撃ち抜いた。貫通した光の粒は、地上に直撃して爆発炎上した。
「あれは……」
気絶寸前のジークが問う。
「あれは、ディサイシジョン……!」
ジークが叫ぶ。スレイは何かを察して、ファンタズマにエネルギーを纏わせる。
「!」
ラインハルトが一瞬身構えた。ジークが放ったのは広く大きな斬撃ブレスエネルギーだった。集中して放つそれに比べて、用途は限られている。その黒いブレスエネルギーがラインハルトの左半身を襲う。しかしこの程度の速度、当たり前のように回避される。だがそれでよかった。
「あとは……頼みます」
黒いブレスエネルギーの膜を突き破って、スレイが突っ込んできた。
ラインハルトは反応が遅れた。龍伐隊十八番の目くらまし。ジークが放った攻撃で左側の視界が遮られた。そこまでは別に構わなかった。
だがラインハルトは思考してしまった。おあつらえ向きの目隠しを果たして彼女が利用するかどうかである。
結果として、ラインハルトの反応速度、飛行速度であれば“どの手”でも問題はなかった。だが瞬きの間に二撃三撃と攻撃の応酬をしてきた相手にとって、スレイ・グラディアにとって、その一瞬の隙は非常に長かった。
「遅い!」
その隙に、素直にシンプルに、目隠しを利用したスレイの渾身の袈裟切りが放たれる。ラインハルトは咄嗟に左腕からブレスエネルギーを噴出させ、ガードした。だが今まで纏っていたエネルギー体には至っておらず、不完全な防御の上からたたき込まれた必殺の一閃は、ラインハルトの腕の骨を、音を立てて折り砕く。自らのエネルギーで焼かれた赤黒い血が噴き出した。
「くっ!」
ラインハルトはその勢いを利用して反転、そのまま急加速して洋上へと消えた。
「はあ、はあ……はぁ……ふぅ」
スレイは息を整えて身構えた。一瞬で離脱できるのであれば、一瞬で戻ることも出来るだろう。
「……」
ジークも襲い来る疲労感に抗いながら、構えた。
「……」
だが音沙汰は無かった。ラインハルトとの戦闘がようやく終わったのだ。
「ありがとうジーク、助かったわ」
ジークの選択肢。それはオブジェクトになることだった。見事にはまっていた。
「いいえ……」
「でもなんで、私が一番得意なのが袈裟だってわかったの?」
「それは……」
ジークは飛びながら後ろに首が折れたかのように意識が一瞬飛んだ。
「ちょ! ジーク!?」
「すいません……戦った後、何故か寝るんです、俺……」
「意味不明!」
「袈裟は……初めて副隊長を見た時と、道場で戦った時……あまりにも綺麗だったので、印象に……」
そしてジークは昏倒した。
「ちょ、ちょっと待ちなさい! ジーク! こら寝るな!」
スレイはジークを抱きかかえて、周囲を見渡す。
「酷い……」
街は焼かれ、内地には大量の龍が残っていた。
「ジークを下ろしてから……」
「スレイ!」
そこにユキヅキが合流する。
「ユキヅキ」
「大丈夫!?」
なんとか。ラインハルトは退けたけど、ジークが気絶したわ。この子、頼めるかしら」
ユキヅキからすればジークの身が一番の優先事項だ。当然快諾する。だが、スレイは下がる気がないようだ。
「スレイも休んだ方が」
「だめよ。まだ。終わってない」
だがスレイ自身、自分の消耗度合いは理解していた。今の状態で降りれば、確実に足を引っ張ると解っていた。
「どうしよう……」
「!? スレイ!」
一粒の光が、空から落ちて来た。高速で落下するそれは、内地でブレスを吐き散らかす龍の、その頭部を撃ち抜いた。貫通した光の粒は、地上に直撃して爆発炎上した。
「あれは……」
気絶寸前のジークが問う。
「あれは、ディサイシジョン……!」