第21話
文字数 1,198文字
「あれは……」
降りた龍は、先ほどクォーツが殺した龍の死体を喰いあさっていた。
「龍の力の継承方法、その一つです。ああして”魂“を喰らうことで、他者の能力を得ることができるのです」
ユキヅキ補佐官が答えた。おぞましい光景だが、どこか懐かしさを感じている自分がいて、また少し怖くなった。
「逃げよう」
「ジーク様?」
「君は今飛べない。その状態で役に立たない俺と、サーベル一本しかない。まずは逃げて、生き延びるんだ。あの龍がこっちに気付く前に」
「グオオオオオオオオ!!」
口の周りを、ナポリタンを食べた子供の様に赤く染めた龍が、こちらを見て咆哮した。
「!?」
まずいと思ったが、次の瞬間にブレス・ライフルの青い光線が龍を襲う。だが三本だけのそれは、龍の外殻を貫くには至らず、龍は上昇して攻撃をやり過ごす。
「おいアグロー!」
「わかってる! こっちに合わせろ!」
「まってニーシャ! 私達三人じゃ無理よ!!」
小柄な女性、シロナがロン毛男のニーシャに叫ぶ。
俺を貶めた三人が、内地に侵攻した龍に応戦していた。だがブレス・ライフルが三本しかない状態では、一秒程定点照射しなければならない。
気が付けば、上空は練度の低い龍伐隊十数名と、五頭の龍が空戦を繰り広げていた。
「今なら逃げられる!」
俺はユキヅキ補佐官の手を引いた。だが、一頭の龍が再び目の前に降り立つ。
「グルルルル」
「ジーク様、下がってください」
ユキヅキ補佐官はサーベルを抜いていた。単騎で龍の外殻を切断できる貴重な武器だが、それはあくまでブレス・ウイングで自由に飛び回れるからこそ、威力を発揮する。
そして、彼女は様子を伺うようにして上空の龍伐隊を見た。
「そうか……」
彼女は“戦争を止める、終わらせる”と言っていた。彼女は龍になれるのか、戻れるのか、そのどちらかだろう。だが今、目撃者が多い状況でそれをやってしまえば、彼女の目的に多大な支障が出るのだと、予想が出来た。
「クソ……」
しかも、開き直って龍になれば、目撃者が一人でもいれば、世界は大混乱である。世には、人の姿をした龍が存在して、人間社会に溶け込んでいる。もしその情報が広まれば、“悪魔男”の展開を再現することになるだろう。
「クソ……」
だからと言って、俺には何も出来ない。手に持つ刀は、恐らく“ファンタズマ”だろう。だが先ほどから、記憶を見た以外になんの反応も示さない。そうなれば単なる刀であり、龍には到底太刀打ちできない。
“彼女を守るぞ”
「!?」
頭に声が響いた。いや、聞こえ……感じ……違う。そのどれでもない。
“ファンタズマを使う。俺に身体を貸せ”
その声は、“まるで自分で物を考えるかのようにして頭に思い浮かぶ”のだ。自分で考えている発想が声になっているのに、俺自身は発想をしていないのだ。まるで、他の誰かが俺の脳みそを使って物事を考えているような感覚。
「誰だっ!」
“行くぞ”
「!」
降りた龍は、先ほどクォーツが殺した龍の死体を喰いあさっていた。
「龍の力の継承方法、その一つです。ああして”魂“を喰らうことで、他者の能力を得ることができるのです」
ユキヅキ補佐官が答えた。おぞましい光景だが、どこか懐かしさを感じている自分がいて、また少し怖くなった。
「逃げよう」
「ジーク様?」
「君は今飛べない。その状態で役に立たない俺と、サーベル一本しかない。まずは逃げて、生き延びるんだ。あの龍がこっちに気付く前に」
「グオオオオオオオオ!!」
口の周りを、ナポリタンを食べた子供の様に赤く染めた龍が、こちらを見て咆哮した。
「!?」
まずいと思ったが、次の瞬間にブレス・ライフルの青い光線が龍を襲う。だが三本だけのそれは、龍の外殻を貫くには至らず、龍は上昇して攻撃をやり過ごす。
「おいアグロー!」
「わかってる! こっちに合わせろ!」
「まってニーシャ! 私達三人じゃ無理よ!!」
小柄な女性、シロナがロン毛男のニーシャに叫ぶ。
俺を貶めた三人が、内地に侵攻した龍に応戦していた。だがブレス・ライフルが三本しかない状態では、一秒程定点照射しなければならない。
気が付けば、上空は練度の低い龍伐隊十数名と、五頭の龍が空戦を繰り広げていた。
「今なら逃げられる!」
俺はユキヅキ補佐官の手を引いた。だが、一頭の龍が再び目の前に降り立つ。
「グルルルル」
「ジーク様、下がってください」
ユキヅキ補佐官はサーベルを抜いていた。単騎で龍の外殻を切断できる貴重な武器だが、それはあくまでブレス・ウイングで自由に飛び回れるからこそ、威力を発揮する。
そして、彼女は様子を伺うようにして上空の龍伐隊を見た。
「そうか……」
彼女は“戦争を止める、終わらせる”と言っていた。彼女は龍になれるのか、戻れるのか、そのどちらかだろう。だが今、目撃者が多い状況でそれをやってしまえば、彼女の目的に多大な支障が出るのだと、予想が出来た。
「クソ……」
しかも、開き直って龍になれば、目撃者が一人でもいれば、世界は大混乱である。世には、人の姿をした龍が存在して、人間社会に溶け込んでいる。もしその情報が広まれば、“悪魔男”の展開を再現することになるだろう。
「クソ……」
だからと言って、俺には何も出来ない。手に持つ刀は、恐らく“ファンタズマ”だろう。だが先ほどから、記憶を見た以外になんの反応も示さない。そうなれば単なる刀であり、龍には到底太刀打ちできない。
“彼女を守るぞ”
「!?」
頭に声が響いた。いや、聞こえ……感じ……違う。そのどれでもない。
“ファンタズマを使う。俺に身体を貸せ”
その声は、“まるで自分で物を考えるかのようにして頭に思い浮かぶ”のだ。自分で考えている発想が声になっているのに、俺自身は発想をしていないのだ。まるで、他の誰かが俺の脳みそを使って物事を考えているような感覚。
「誰だっ!」
“行くぞ”
「!」