第64話山小屋② だれ?

文字数 904文字

オータムは俺の目を見ながら語りかけた。

「何がだよ!」
「仲直りするときは時間が()てば、自然と仲は戻っていたよね」

「喧嘩……なんかしてないぜ!」


「……そっか!」
 笑いを我慢(がまん)するようにオータムは答えた。


「……で、どうしてカップヌードルを作る準備をしているんだよ!」
「メロンとアンコが帰ってきたら、お腹を空かしているだろうと思ったからだよ。……フィンの為ではないよ!」
「は!?」

 喧嘩は(おさ)まっていたが、言い合いは続いていた。炎の残り()くらい小さいものではあったが、これで消化できたと思う。
「絶対、見つけだそうね。メロンとアンコを……」
「ああ。見つけてやる。やってやるぜ!」

 根拠はなかったが、俺とオータムは見つける自信があった。昔を思い出すと、かくれんぼをして遊んだ時も、メロンは隠れるのが上手かった。

 他のクラスメートは見つけられず、四苦八苦(しくはっく)して諦めていたが、俺とオータムの2人が探せば、必ずメロンは見つけられた。今回もきっと上手くいくはずだ。

「腹減ったな!」
 俺の腹の虫は鳴って、鳴りやまない。
「あ! そう言えば! メロンが作ってくれたおにぎりが車の中にあったな」

「……そうだったね」
 山小屋に止めていた車に向かった。車の上には落ち葉がのっており、それを払いのけていた。
「ずっと。近くにいたから気付かなかったけど。あいつ、いつも俺たちの事を考えてくれていたよな」

 落ち葉を払った俺は、後部座席にある袋の中から、おにぎりを取り出した。

「そうだよ。小さい時からそうだ。メロンのおかげでずっと3人だ」
 俺は取り出した袋の中から、おにぎりを2個取り出し、1個をオータムに渡した。
「お前も疲れているだろ。図書館の時に倒れてたし」

 ずっと運転をしてくれていたし、想像以上に疲れが()まっていたのだろう。図書館でも急に倒れたことを気にかけていた。

「ああ! あの時、実は」
 歯切れが悪そうにオータムが話はじめた時。

「素敵ですね」
 女の声が近づきながら、話しかけてきた。山の夜道は特に暗く、誰だか分からなかった。歩いてくる人影から(さっ)するに小柄である。下の落ち葉を踏む音が聞こえる。声はか細く震えていた。

「だれだ?」
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