第66話山小屋④なぜ君がここに?

文字数 1,146文字

 「なぜマコがここに?」と疑問が浮かぶ。

 アンコの言葉を聞いて何かを感づいたのか周りの木を見渡した。静かにオータムが少し歩きだし、森の中に向かって叫ぶように問いかけた。

「マコ! そこにいるんだろ。出てきなよ!」

 辺りは暗くて何も見えない。状況を知らない人が今のオータムを見れば、気が(くる)っているのではないかと思っただろう。
 
 しばらくすると山小屋の後ろから、ガサガサと草がこすれる音が聞こえる。
 音はオータムが叫んだ方向とは逆方向から聞こえた。俺は近くに落ちていた木の棒を右手に持ち、臨戦態勢(りんせんたい)に入った。

 静かに出てきたのは、オータムの予想通りマコだった。


「……なんでわかったの?」
 両手を上げながら「降参よ」と言い、目の間にゆっくりと現れた。

「アンコが教えてくれたからさ。それに誰かにつけられていたのは気付いていた」

 オータムは少し笑みを浮かべながら悠々(ゆうゆう)と話している。俺は全く気が付かなかった。

「誰が付いてきたのかは分からなかったが、恐らく敵ではないと感じていた。敵であれば、いつでも捕まえられただろうからね。それに現にアンコが無事で戻ってきた」

「敵かもよ?」
 マコも笑みを浮かべた。俺とアンコには笑みはなく、状況を理解できない。夜の冷たい風が吹き、風のせいで草木が不気味な音を(かな)でていた。

「メロンちゃんはどこですか?」
 アンコが()(しぼ)るように質問する。俺を盾にして身を隠している。

「……残念ながら、分からない」
 マコは残念そうに答える。

「オズワルトと関係があるのかい? アーセがリーダーだね? 後を付けられていたのは、実に不愉快だね」


 オータムがそう問い詰めると、苦そうな顔をして、彼女は首を縦に振った。

「おい! あいつに電話しろ!」
 マコはしぶしぶ携帯を取り出して、アーセに電話した。


「……アーセか。どういうことだ? 敵だったのか?」

「マコの携帯からお前の声が聞こえたということは尾行がばれたか。すまんな。悪気はなかったんだ。ただ、護衛の意味を――」


「ふざけんじゃねえ!」

 俺は怒声をあげた。その様子を見ていたオータムが俺から電話を取った。
 気持ちが(おさ)まらない俺はその辺りに生えている木にまた八つ当たりをした。しばらくして、オータムは電話を切った。

「どうだった?」
「とりあえず、アーセのいた海に行こう」
「メロンは?」
「メロンとは関係がないようだ。だが、……きっと何か手がかりがあるよ。急ごう」


 オータムは行く準備を始めた。俺はオータムに電話の内容を詳しく聞かなかったが、オータムが得策と考えたのであれば、一番良い選択肢のはずだ。

 アンコが申し訳なさそうにじっと立っていた。

「おい! 何をしているんだよ。置いてくぞ!」

 アンコは急いで車に乗り込んだ。アンコには話を色々と聞きたい事もあった。
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