第38話  アイスがとけるその前に

文字数 1,037文字

 車のバックミラー越しにアンコの不安そうな顔が写る。アイスを食べながら発した言葉に信ぴょう性は下がる。顔をしかめていたが、それが不安からきているのか、アイスが冷たすぎるからその表情になっているのか、俺には分からない。

「俺たちがやる事は変わらねえ。図書館に行って博士のメッセージの意味を知りたいだけだぜ」  

「話合いで解決できないんですかね?」

 アンコはどこか悲しげに話している。それが戦争になる事に対してなのか、フィガロたちに対してなのか、分からなかった。

「ほんとだよね」  
 女性陣2人は不安そうにしていた。

 その割にはお互いが食べているアイスが美味しそうに見えたのか、交換してアイスの味を楽しんでいた。アイスに賞味期限(しょうみきげん)があるかどうか等の他愛(たわい)もない話でずっと盛り上がっていた。

 先程まで真剣な顔をして不安がっていたのはどこに行ってしまったのかと少し(あき)れた。後部座席からオータムの声が聞こえた。女性陣の話に熟睡(じゅくすい)できなかったのかもしれない。

「特にマーヒーの人は気性(きしょう)が荒いからね。難しいだろうね」
 よほどの事がない限り抑える事ができないだろうとオータムは言った。さらにフィガロの奥さんから最近、マーヒーでは心臓発作で亡くなる人が急増していると心配していたそうだ。


「Game世界の人ってどうしていたんだろな? 200か国もいたらリーダーなんか決めらないだろ。闘技場で喧嘩(けんか)か? 一番になった奴とか」

 それならば面白そうだから、参加してみたいと思っていた。もし、優勝したとしてもトップは辞退するつもりだが。

「Game世界の人々は1800年代から人気投票をして決めていたらしいよ。トップになりたい人が手を挙げて」
 メロンが手を挙げながら、得意げに話した。

「人気投票? 学生か?」

「1人に1票権利を与えて、この人にトップになってほしいって決めるんだって。それを選挙って言うんだって。博士が教えてくれたよ」

「ふーん。まあ、この世界じゃ無理だろうぜ。こんな閉鎖的な国じゃ。だれがトップかもよく知らない。大体20区もあるんだぜ。まとまるわけないだろ」

 最近、メロンが俺より頭が良いのが悔しい気持ちだ。

「ところで、もし、フィガロさんたちの企み通りに話が進んだらどうなるんですか?」
 アンコはオータムに聞いていた。

「フィガロたちの企ては失敗に終わるだろうね。それが分かっているからフィガロたちも実行に移せないんだろうね。……残念だけど」

「そうですね……」アンコは複雑な表情を浮かべていた。

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