第51話 学生の町 メタ!

文字数 966文字

 車を走らせていくと、メロンも後部座席で寝ており、3人とも眠りに落ちてしまった。俺は運転席の窓を開けて、風を受けながら、眠気(ねむけ)を覚ましながら車を走らせた。

 バックミラーを確認しながら、俺たちを追っている奴がいるかどうかを確かめていたが、その気配はなさそうだ。

 窓から差し込む景色は爽快(そうかい)で、視界には草むらの奥にはそびえ立つ大きな木が見える。草むらから木まで、まるで獣道(けものみち)のような一本の線が何本できている。何事も答えは決まっている気がした。

 景色(けしき)段々(だんだん)と山から民家へと変わり、街に近づいていることが分かった。もうしばらく車を走らせると、後部座席から声が聞こえた。

「ここが大学のある町メタですね!」

 メタの町は(にぎ)わっていた。町の入り口には、分かりやすく大きな門があった。地べたにブルーシートを()かれており、物々交換で食料品や衣類などが手に入る闇市(やみいち)が数十か所も広がっていた。

 なぜこの町では国以外の物々交換所が大丈夫なのだろうかと不思議だった。オータムによれば、中心部から外れるに連れて国の統治ができてない状況にあると推定していた。

 確かにオータムの言う通りで、国の役人も物々交換所で取引をする姿も見られるほど自由度が高かった。ただし、治安は良くない。工場街でもないのに(よど)んでいるようにみえた。人々の目もどことなく(うつ)ろに見えた。

 メロンが闇市にでている食べ物屋に興味を持っていると、「絶対食べたらだめですよ」と強く手を引っ張って止めた。何が入っているか分からないから病気になると言っていた。

  この場所に大学があるとは思えなかった。少し歩くと大きな検問所(けんもんじょ)(かま)えられていた。当然俺たちはその門を通過するのに必要な券や許可証を持っているわけがない。

 すると、アンコは当たり前のように自分の胸ポケットからカードを取り出して、検問所(けんもんじょ)に立っている人に提示した。その人はカードの写真とアンコを見比べて無言で進めと、合図を出した。俺たちはきょとんとしていた。

「何しているんですか。早く行きますよ!」
 俺たちはアンコの後を付いていき、検問所を通過した。小柄なアンコがこの時、なぜか大きく見えた。

「今は何を提示したんだい?」
 オータムは先程のカードを、検問員みたいにアンコのカードをじっくり見ていた。

「あ! 初めてですよね。これは大学証です!」
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