第15話 君の名は?
文字数 1,485文字
「あれ。 ……車の中ですか?」
まだ少し寝ぼけている彼女が目を覚ました。 俺たちは何事もなかったように美術館から脱出した。俺が彼女を背負い、メロンが俺の横を歩いた。
その間、オータムに車を回してもらった。彼女を見たところ、俺たちと同じ年齢に見える為か、美術館にいた警備員はこちらを見向きもしなかった。
「あたしはメロン。どうしてあんなところにいたの?」
彼女は動揺 してあたりをキョロキョロした。見覚えのない景色だったのか、周りを見渡して、余計に混乱していた。
メロンが彼女の手を握り質問をもう一度すると少し落ちつきを取り戻したようにみえた。
「信じてください! 私は何もしてないんです。私のいた大学の教授が発表した研究内容が国に対する反逆罪 と判断されて捕まったんです。教授の研究室で授業を受けていた私も疑いの罪で捕まっていたんです!」
彼女は振り絞 って話終わるとメロンにしがみついて号泣した。たしかに彼女の話が本当であればかわいそうな話である。助手席に座っていたオータムも「信じてってことは、相当尋問 されたんだ」と小声で俺に耳打ちした。俺も彼女に同情し始めていた。
それと同時にあの工場にいた人達は想像通り、囚人だったと確信した。
「この国では囚人だったのね」
なるほどとメロンは納得した。この国と言ったが、他に国はない。
「なんで。昔のお金を作っているの? お名前は?」
メロンはしがみついてきている彼女の頭を優しくなでていた。
「アンコです。なんでお金を作っているかは、知らされてないです!」
アンコは少し泣き止んだが、メロンからは離れないでしがみついている。それだけあの場所は怖かったのだろう。
「いつからあの工場にいたんだい?」
「3か月前ですかね。私は20区にある大学の近くに住んでいたんですけど、教授が論文を発表した途端 に、警察が来ました。初めは警察に取り調べを受けていたんですけど、途中から手の甲に傘のタトゥーが入った人達に交代していました」
「傘のタトゥー?」
国の組織にそんなやつらがいるのだろうかと疑問を持っていた。
「たしか……オズワルトがどうとか」
「オズワルト!」
アンコが発した言葉に驚いた。アンコは何か言ってはいけない言葉を口に出してしまったと思ったのか、また強くメロンにしがみついた。
「オズワルトは今の国の組織の一員ってことかよ?」
確認の為にオータムを見たが、オータムも分らないと首を横に傾けた。
「でも、手がかりは少し掴 んだ。オズワルトは国に関わっている可能性があり、しかも手の甲に傘のタトゥーがある」
「あのー、私って大丈夫なんでしょうか? あそこから出して頂いても行く当てありませんし、追いかけられそうですし」
不安げに後部座席に座っているアンコは車のバックミラーを見た。運転していたオータムと目を合わせた。俺とオータムは少し考えていた。明らかに危険な爆弾を持っている気分にもなって、苦笑いをした。
「私たちのところにくればいいよ!」
メロンが不安がるアンコを抱きしめていた。雨に震える子犬を大切に抱くように。
「いや、しかしだね。実に――」
「彼女は大事な証人よ。それに彼女が必要になる時がきっとある気がする。それに――」
メロンはそこからは語らなかったが、目ではこんなかわいい女の子を捨ててかえるんじゃないよねと言いたげだ。強い訴えかける眼差しをオータムに向けていた。
なぜメロンがアンコを助けるのかよく分からなかったが、オズワルトから逃げることができた人を見捨てる気持ちにはなれなかった。
「……わかったよ」
オータムは折 れた。
まだ少し寝ぼけている彼女が目を覚ました。 俺たちは何事もなかったように美術館から脱出した。俺が彼女を背負い、メロンが俺の横を歩いた。
その間、オータムに車を回してもらった。彼女を見たところ、俺たちと同じ年齢に見える為か、美術館にいた警備員はこちらを見向きもしなかった。
「あたしはメロン。どうしてあんなところにいたの?」
彼女は
メロンが彼女の手を握り質問をもう一度すると少し落ちつきを取り戻したようにみえた。
「信じてください! 私は何もしてないんです。私のいた大学の教授が発表した研究内容が国に対する
彼女は振り
それと同時にあの工場にいた人達は想像通り、囚人だったと確信した。
「この国では囚人だったのね」
なるほどとメロンは納得した。この国と言ったが、他に国はない。
「なんで。昔のお金を作っているの? お名前は?」
メロンはしがみついてきている彼女の頭を優しくなでていた。
「アンコです。なんでお金を作っているかは、知らされてないです!」
アンコは少し泣き止んだが、メロンからは離れないでしがみついている。それだけあの場所は怖かったのだろう。
「いつからあの工場にいたんだい?」
「3か月前ですかね。私は20区にある大学の近くに住んでいたんですけど、教授が論文を発表した
「傘のタトゥー?」
国の組織にそんなやつらがいるのだろうかと疑問を持っていた。
「たしか……オズワルトがどうとか」
「オズワルト!」
アンコが発した言葉に驚いた。アンコは何か言ってはいけない言葉を口に出してしまったと思ったのか、また強くメロンにしがみついた。
「オズワルトは今の国の組織の一員ってことかよ?」
確認の為にオータムを見たが、オータムも分らないと首を横に傾けた。
「でも、手がかりは少し
「あのー、私って大丈夫なんでしょうか? あそこから出して頂いても行く当てありませんし、追いかけられそうですし」
不安げに後部座席に座っているアンコは車のバックミラーを見た。運転していたオータムと目を合わせた。俺とオータムは少し考えていた。明らかに危険な爆弾を持っている気分にもなって、苦笑いをした。
「私たちのところにくればいいよ!」
メロンが不安がるアンコを抱きしめていた。雨に震える子犬を大切に抱くように。
「いや、しかしだね。実に――」
「彼女は大事な証人よ。それに彼女が必要になる時がきっとある気がする。それに――」
メロンはそこからは語らなかったが、目ではこんなかわいい女の子を捨ててかえるんじゃないよねと言いたげだ。強い訴えかける眼差しをオータムに向けていた。
なぜメロンがアンコを助けるのかよく分からなかったが、オズワルトから逃げることができた人を見捨てる気持ちにはなれなかった。
「……わかったよ」
オータムは