第47話 意味のある嘘

文字数 1,042文字

「民宿みたいだね!」
「民宿ってなんだよ?」
「……こういうところをそういうの!」
 メロンは少し引きつって、笑っていた。

 アーセと別れたあと、今日泊まる部屋に向かった。マコが部屋まで案内してくれた。部屋に向かう途中、横を歩いていたアンコを見ると、前髪がおでこに張り付いていた。海の湿気(しっけ)のせいかもしれない。

 メロンは(たたみ)の部屋に寝そべった。この民宿は古く、年季(ねんき)が入っており、畳の机の上にはいくつかお菓子が乗っている。部屋にはテレビを置いているが、とても小さく近づかないと画面に映し出されている映像が見えないほどだ。映像が見たとしても、1番組しかなく、特に興味のある内容ではない。以前は民間がテレビを作っていたのだから不思議だ。

「へー。メロンちゃん物知りですね!」
「まあね!」
 メロンは得意気だった。この調子なら先程の話をしても問題ないと判断し、アーセからの話にあった俺たちは尾行されているかもしれないとメロン、アンコにもした。

 以外にも2人は予測していたような反応をしていた。

「大変じゃないですか。私のせいですかね!」
 アンコもうなだれるようにメロンの(そば)に寝そべった。 
「大変だね。私ケイ泥得意!」

 アンコに(おお)いかぶさるようにして、メロンはアンコの上に乗っていた。あいつなりに気を使ったのだろう。場を(なご)ませようとしてるように見えた。


「アーセさんが言っていたんですね?」
「そうだぜ。あいつは馬鹿だけど、嘘は嫌いだったからな」
「でも、アーセさん嘘をついていましたよね!」
「嘘?」
「大きな鮎はこの辺りでは釣れません。基本的には、川のお魚なので」
 アンコはそう淡々(たんたん)と答えた。おでこにくっついて髪をタオルで()いていた。それと同時に2つ結びをしていた後ろ髪をほどいていた。

 確かに川魚がこの海で釣れるはずがない。ここのオーナーであれば。知っているはずだ。何で嘘をつく必要があったのか。オータムの方をチラリと見たが、あいつも理解して見過ごしていたようだ。

  気付かなかったのは俺だけか……。
「分からなかったのか。気付かなかったのかい、フィン!」
 オータムはわかり易い嘘には、何かメッセージさえ感じると(つぶや)いていた。

「仕方がないよ。フィンは何も知らないんだから」
 メロンは俺を助ける為に放った言葉であろうが、フォローになっていなかった。
「何の為に嘘ついたんだよ……明日聞いてみる。どちらにせよ、アーセを俺は信じるぜ!」俺はふてくされていた。

 人間の武器は信頼だ。
 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み