第52話  メタ②

文字数 1,119文字

 アンコは言った。
「現在の大学生は非常に重宝(ちょうほう)されていて、門をくぐることができるのは。大学の生徒、卒業生や関係者だけなんです。ちなみに同伴者(どうはんしゃ)は5人まで入れんですよ」

 門をくぐると、小さな町が広がっていて、レンガ造りの建物が多く立ち並んでいた。先程までの暗い雰囲気が一変したように感じる。

「大学生ってすごく重宝されているんだな。学生楽しそうだぜ!」
「お金のない世界では、人の知識や能力が貴重なのかもしれない」
 オータムはつぶやいた。大学に興味あるみたく、周りをキョロキョロと見回していた。こんなに興味を持っている様子を見るのは初めてかもしれない。アンコに色々と質問していた。


「なんで中心部から離れた場所に大学があるんだろう? 普通は中心部にあると思わないかい?」
「実は、この大学は元々Game世界から存在していたんですよ!」
 アンコが指を立て説明を始めた。
「この大学は今の国王も卒業した大学です。初代国王もこの大学の卒業生であり、その伝統が引き継がれているんです」
「おまえ、そんなに頭がいいのか? 見た目からはそうは見えないぜ」
 俺はからかいながら言った。
「……ちょっと! 見た目で判断しないでください!」
 アンコは少し怒った表情をみせた。

  散策(さんさく)しているとメロンがお腹を空かせたようでアンコに食べ物をせがみだした。
「大学出身者は学食なら無料で食べられるんですよ」
 メロンは驚き、アンコを拝んでいた。
「恐ろしく、優遇(ゆうぐう)されているね」
  オータムもそれには驚きを隠せなかった。
「てか、どうして工場でいたんだっけ?」
「私が原因ではないですよ。教授ですから」
 アンコは過去の出来事を思い出したように怒り出した。

 食堂にはあまり人がいなかった。授業中の時間帯らしくもう少しすると人が多く入ってくるみたいだ。メニューはうどんやラーメンや弁当が多く準備されていた。俺はラーメンを食べて、3人は弁当を注文していた。味はそんなにおいしくはないが、無料でお腹いっぱいになるのであれば、まったく問題はない。

「アンコは何を研究していたんだよ?」
「私は遺伝子工学(いでんしこうがく)専攻(せんこう)していました」
「そういえば、同期にハーヴェイがいましたよ!」
「ほー! ハーヴェイかい!」
 珍しくオータムも驚いていた。

 ハーヴェイは何者なのかをわかっていないのは俺だけみたいだ。それに気づいたのか、メロンは静かに俺の肩を(たた)いた。
「ほら。メガネをかけたコメンテーターの男いたでしょ。いつも笑顔でテレビに出ている人」
 そういえば、博士の家にいた時にもテレビでそいつが映っていたことを思い出した。
 
 この世界で一番の人気者で、知名度も一番高い。それがハーヴェイだ。
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