第61話  蝙蝠《こうもり》と時鳥図書館①

文字数 1,023文字

 図書館はまるで宮殿のようなで、入り口を探すだけでも一苦労だった。壁には見事な彫刻が飾られ、天井には天使の絵が描かれており、神秘的(しんぴてき)な雰囲気に圧倒される。入り口に掲示された図書館の全体図は迷路のような複雑さだ。

「迷路みたいで迷いそうだぜ……」
「フィン、迷子になったらだめだよ」
「すごいぜ。どこに向かったらいいんだよ?」
 俺が迷っていると隣でアンコが驚きの声を上げた。

 目を向けると、そこにはいるはずのないコウモリがいた。俺も驚いて声を上げそうになるが、辛うじて我慢した。周りを見るとスーツ姿の男女2人しかいなかった。

「どうしてコウモリがいるのよ? オータム」
「本で読んだことがあるけど……古い本に虫寄ってくるんだ。それを食べるコウモリを飼っている図書館があるとは知っていたけどね。この図書館がそのはずだよ」
 飄々(ひょうひょう)と答えた。
「それを知ってるなら、先に言ってくれよ!」

 図書館の1階は資料展示スペースになっていて、俺たちは受付のある3階に向かった。受付には女性が3人ほど立っていた。女性は機械的に仕事をしているように見える。表情も一切変えずにロボットではないかと思うくらいだ。

「カギ貸してください! もらってきますね」
 オータムからカギを受け取ると、アンコはひとりで受付に向かった。アンコの後を追って、俺たちも受付に向かった。大学証があるのが心強いのか、堂々とアンコは受付に博士からのカギを提示(ていじ)した。


「おはようございます。図書館のカギがあるんですけど」
「少々お待ちください」

 女性はカギの方に目を向けると、淡々(たんたん)と返事をして、奥へ消えていった。アンコは後ろを振り返り、ピースサインをこちらに出した。全て順調に進んでいる合図だ。
 
 しばらくすると、女性が戻ってきてアンコに何かを手渡した。
「こちらになります」
 渡されたのは紙袋だった。 女性は深々とお辞儀(じぎ)し、また自分の持ち場へ戻っていった。

 アンコは紙袋を持ってこちらに戻ってきて、オータムに手渡した。すると、紙袋を持った瞬間、オータムは(ひざ)から(くず)れ落ちるようにして倒れた。
「大丈夫か?」
 俺はオータムの手を取ると、なんとか立ち上がった。オータムの目は何かを思い出すように天井を見上げていた。
「これは違う場所で開けたほうがいいね」
 オータムはささやいた。その時に紙袋はメロンが預かった。

「どうして……?」
 メロンが問いかけるが、早足(はやあし)で、オータムは歩き出していた。
「後ろから、複数人につけられている」
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