第57話  コーンスープで一休み

文字数 900文字

 俺たちはハーヴェイに食事の感謝の言葉を述べ、別れを告げた。ハーヴェイから紹介されたホテルで宿泊することとなった。テレビ局で働いている者は無料で滞在でき、そこに泊まる。

 ハーヴェイが話していた「どの世界でも楽しんでいるのは一部の人だけ」という話を思い出していた。

 喫茶店から歩いて数分、目的の宿泊施設に到着し、無事にチェックインを済ませた。部屋は2つで、どちらも広々としていて、大きな窓から大学が一望できる見晴(みは)らしの良い場所だった。

 部屋割(へやわり)は俺とオータム、メロンとアンコに分かれた。どちらの部屋も新婚旅行の客の向けに、バラの花びらがベッドに散らばり、部屋のテーブルの上にはフルーツが置かれていた。俺とオータムは目が合うと気まずく、笑うしかなかった。他には、大きなテレビが1台ポツンと置いてあった。

 オータムもやる事がないと感じたのか、メロンたちの部屋に行くことにした。部屋のチャイムを鳴らすとメロンがドアを開けてくれた。アンコは昔なじみの店に顔を出したいと言ったらしく、1人で外に出て行ったようだ。

 久しぶりに3人での時間を過ごすことにした。

「急展開で、色々と疲れたね!」
 メロンはコーンスープを手に外のベランダに出ると、外はそこまで寒くはなかった。「あの頃が(なつ)かしいね」と11区にいた時を思いながら話していた。

「考えがついていかないよ!」
 オータムもさすがに疲れていたようで、椅子に腰かけた。

「世界を変えようとしている人、ハッカーに依頼している人、それを阻止しようとする人。その中で僕たちは図書館に向かっている。今まで生きてきた中で一番濃い時間を過ごしているね!」

 図書館に何があるのかは、知らされていない。何もないかもしれない。期待しているのは、博士が誰に殺されたのか、答えを見つけることだ。

「図書館に何があるかは、分からないぜ。何もないかもしれないし、次のメッセージが残されているかもな」

「不安を(あお)らないでくれよ……」
 オータムは力なくそう言った。ホテルの部屋にコーンスープの即席がアメニティとして置かれ、メロンが俺たちの分も作ってくれた。俺たちはそれを飲みつつ、深いため息をついた。

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