第49話  嵐が去った後②

文字数 685文字

「さあ! 図書館までは、あとどのくらい?」
 メロンは後部座席(こうぶざせき)から運転席の方に体を乗り出して尋ねた。
「もう少し時間はかかるかな。次の町、メタを過ぎると図書館がある町だよ!」

 オータムは助手席からコーヒーを飲みながら答えた。マコさんが入れてくれたコーヒーは濃厚で、牛乳を入れるとちょうど美味(おい)しく飲めた。今回は俺が運転をする番だ。メロンは満足げに後部座席に体を戻し、アンコの肩の長さまである後ろ髪を結んであげていた。

 ここからメタまでは高速道路がないので、途中で休憩をはさんで6時間ほどかかる。長い旅だ。途中で休憩所はあるが、トイレ休憩くらいしかせずに進む予定だ。

 昔は自動販売機(じどうはんばいき)というものがあり、機械にコインを入れるだけで飲み物や食べ物を手に入れることができたそうだ。自動販売機がある国とない国があると、博士が残した本に書かれていた。 オータムが予測するには、隣接(りんせつ)する国がない島国は特に治安が良かった。たしかに隣接する国があったら、国盗(くにと)り合戦になり収集がつかないだろうなとも思っていた。

 しかし、今は貨幣がないため、自動販売機を設置することもできない。交換で成り立つ世界では、実現しないだろう。ただ、気になるのはなぜGame世界の資料がずっと隠されているのかということだ。

 もしGame世界の資料が残っていたとしても、誰もがオズワルトの存在を知ることはないだろう。ウイルスが流行り、人口が減ったということにしてしまえば、オズワルトの行動に誰も気づかないのではないか。

「何を考えているの?」
 気がつけば、助手席のオータムと後部座席のアンコはぐっすりと眠っていた。
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