第6話 バベルの塔
文字数 1,666文字
工場の入り口は正面の1つしかなく、警備員が5人に立っており、均等 に並んでいる。
堂々と入り込む隙 はなかった。観光客のふりをしてメロンが正面突破を試 みたが、あえなく失敗に終わった。他に作戦も考えていなかった為、近くにあった古い喫茶店で話し合うことにした。
喫茶店には家族連れやカップルなどが多く、お昼ご飯を食べておしゃべりをしていた。俺たちもとりあえず飯を食べることにした。
「工場に潜入するのは難しそうだね。何を頼もうかな?」
メロンはテーブルに肘 をつき、つまらなそうに喫茶店のメニュー表をじっくり見ていた。他の人が何を注文しているのか、周りを見渡して注文する商品を決めているようだった。
「ほんとだね。簡単には潜入できそうにないね」
オータムも自分にメニュー表が回ってくるまでは周りを見渡して、他の客がパスタを多く注文しているのを見て、ナポリタンパスタを注文することに決めたようだ。俺もその様子をみて同じものを注文した。
「見て! おしゃれな袋だよ」
「観光にきているんじゃないぜ」
店にいる家族連れやカップルの手荷物には、水色を基調とした金色の文字が書かれたシンプルかつおしゃれな袋を持っていた。
俺は何か策はないのかと考えを巡 らせていた。
工場の正面には警備員が5人。爆竹 で警備員の気を散らして、その隙 に潜入するのもありかと考えていたが、それはやりすぎかと自制した。
「たしかに! しかも多くの人が持っているね」
オータムもその話題を続けた。まったく、俺ひとりで来た方がうまく工場に潜入できたのではないかと考えだしていた。どうでもいい話と腹が減ったこともあって俺の思考は停止した。
「近くに何かあるんじゃないかい?」
「あった! 工場の横に美術館があるみたいだよ」
「ふーん。……え!」
俺はびっくりして、膝 をテーブルに勢いよくぶつけた。その際、店内に大きな音が響き渡った。店員や周りのお客さんからの視線を強く感じたが、恥ずかしくなってメニュー表を手にして、メニューを見ることに集中した。
すぐにナポリタンパスタを店員は持ってきて「お待たせして申し訳ございません」と深々頭を下げてきたので、俺も深々 とお辞儀 をした。どうやらこの店員はご飯が出てくるのが遅いから、怒っていると考えたようだ。
「しかもマップで見たら、工場よりも美術館の方が広いよ」
メロンは美味しいと言いながら、注文したパスタを食べていた。
「よし! 美術館から潜入しようぜ」
先程の俺一人で来ればよかったという言葉は早々に撤回 する事となった。
美術館は無料開放されていた。
「すごいね! こんなところがこの世界にあったんだね!」
メロンが美術館に入るなり、すぐ叫んでしまい、周りの人がこちらを振り返った。
美術館に入ると赤い壁に絵がいくつも掛けられていた。絵の下に書いている解説文には、作られた年数や作品の意味が細かく書かれていた。芸術画から現在作成された芸術画まで色々展示されていた。
建物は1階建てだが、とても奥に広く学校の体育館が何十個も収容できるスペースがあるように思う。
自然の光が入るようにも設計されているようで建物を大きく感じさせる。美術館は各部屋によって、テーマが決まっており、2000年前に使われていた壺 やその時の暮らしの資料も展示されていた。そこでも不思議だったのが、Game世界の暮らしはどこにも展示されていなかった。
2000年前の資料があるのに、1000年前の資料がひとつもないのは不思議でならなかった。
「大きな絵だな! 昔の人達はどうやって描いたんだろう」
オータムも感嘆していた。一つ一つの絵をじっくり見ていた。
特にオータムがじっくりとみた絵が約1500年前に書かれたブリューゲルという人が書いた『バベルの塔』だった。
解説文には『大昔、言葉は1つだった。神に近づこうと人間は天まで届く塔 を建てようとした。その行為に言葉を乱し、世界をバラバラにしようと神は怒った。その街の名はバベル』と書かれていた。
堂々と入り込む
喫茶店には家族連れやカップルなどが多く、お昼ご飯を食べておしゃべりをしていた。俺たちもとりあえず飯を食べることにした。
「工場に潜入するのは難しそうだね。何を頼もうかな?」
メロンはテーブルに
「ほんとだね。簡単には潜入できそうにないね」
オータムも自分にメニュー表が回ってくるまでは周りを見渡して、他の客がパスタを多く注文しているのを見て、ナポリタンパスタを注文することに決めたようだ。俺もその様子をみて同じものを注文した。
「見て! おしゃれな袋だよ」
「観光にきているんじゃないぜ」
店にいる家族連れやカップルの手荷物には、水色を基調とした金色の文字が書かれたシンプルかつおしゃれな袋を持っていた。
俺は何か策はないのかと考えを
工場の正面には警備員が5人。
「たしかに! しかも多くの人が持っているね」
オータムもその話題を続けた。まったく、俺ひとりで来た方がうまく工場に潜入できたのではないかと考えだしていた。どうでもいい話と腹が減ったこともあって俺の思考は停止した。
「近くに何かあるんじゃないかい?」
「あった! 工場の横に美術館があるみたいだよ」
「ふーん。……え!」
俺はびっくりして、
すぐにナポリタンパスタを店員は持ってきて「お待たせして申し訳ございません」と深々頭を下げてきたので、俺も
「しかもマップで見たら、工場よりも美術館の方が広いよ」
メロンは美味しいと言いながら、注文したパスタを食べていた。
「よし! 美術館から潜入しようぜ」
先程の俺一人で来ればよかったという言葉は早々に
美術館は無料開放されていた。
「すごいね! こんなところがこの世界にあったんだね!」
メロンが美術館に入るなり、すぐ叫んでしまい、周りの人がこちらを振り返った。
美術館に入ると赤い壁に絵がいくつも掛けられていた。絵の下に書いている解説文には、作られた年数や作品の意味が細かく書かれていた。芸術画から現在作成された芸術画まで色々展示されていた。
建物は1階建てだが、とても奥に広く学校の体育館が何十個も収容できるスペースがあるように思う。
自然の光が入るようにも設計されているようで建物を大きく感じさせる。美術館は各部屋によって、テーマが決まっており、2000年前に使われていた
2000年前の資料があるのに、1000年前の資料がひとつもないのは不思議でならなかった。
「大きな絵だな! 昔の人達はどうやって描いたんだろう」
オータムも感嘆していた。一つ一つの絵をじっくり見ていた。
特にオータムがじっくりとみた絵が約1500年前に書かれたブリューゲルという人が書いた『バベルの塔』だった。
解説文には『大昔、言葉は1つだった。神に近づこうと人間は天まで届く