その14 吾輩はコネである
文字数 498文字
吾輩はコネ入社である。役職はまだ無い。
どうしてここに入ったのかはもちろん見当ついている。内定をもらえずジメジメした気分で泣いていたときに、叔父に声を掛けてもらったのだ。吾輩はそれではじめて内定という言葉を聞いた。しかもあとで聞くと、その電話が入社試験の面接になったという。世間的には一番狡猾なやり方と言われるものだ。しかしその当時はとにかく就職したかったので、別段やましいこととも思わなかった。ただ電話を切る時にフワフワとした感じがあったばかりである。
吾輩がこの職場に通い始めた当時は、社長以外のものには甚だ不人望であった。どこへ行っても相手にしてくれ手がなかった。社長に似た顔をした三流大学卒の新人を他の社員がどう見ているか、その時に分かった。吾輩は社長候補だ。周囲の社員諸君に妬まれて当然なのである。吾輩は仕方が無いから出来る限り吾輩を入れてくれた社長の傍に居る事をつとめた。帝王学を手っ取り早く身につけねばならぬ。
コネ入社で窓際族の俺は、暇なので仕事中に小説を書いた。売れると一層嫌われてしまうだろうから、このまま削除する。叔父には感謝しているが、そろそろ辞め時なのだろうか。
[了]
どうしてここに入ったのかはもちろん見当ついている。内定をもらえずジメジメした気分で泣いていたときに、叔父に声を掛けてもらったのだ。吾輩はそれではじめて内定という言葉を聞いた。しかもあとで聞くと、その電話が入社試験の面接になったという。世間的には一番狡猾なやり方と言われるものだ。しかしその当時はとにかく就職したかったので、別段やましいこととも思わなかった。ただ電話を切る時にフワフワとした感じがあったばかりである。
吾輩がこの職場に通い始めた当時は、社長以外のものには甚だ不人望であった。どこへ行っても相手にしてくれ手がなかった。社長に似た顔をした三流大学卒の新人を他の社員がどう見ているか、その時に分かった。吾輩は社長候補だ。周囲の社員諸君に妬まれて当然なのである。吾輩は仕方が無いから出来る限り吾輩を入れてくれた社長の傍に居る事をつとめた。帝王学を手っ取り早く身につけねばならぬ。
コネ入社で窓際族の俺は、暇なので仕事中に小説を書いた。売れると一層嫌われてしまうだろうから、このまま削除する。叔父には感謝しているが、そろそろ辞め時なのだろうか。
[了]