その15 言わんの?バカ!
文字数 496文字
高校の授業で「古事記」を読んだ。男から言わないとダメなのか……。
小学校の時、好きな女の子がいた。小学生の愛情は、悪口やからかいとして表出されることがある。僕も彼女をよくからかっていた。彼女に追いかけられ、ゲンコツされることが楽しかった。先のことなんてほとんど考えていなかった。楽しい時間が、ずっと続くと思っていた。
ところが彼女は翌週、転校することになった。担任教師が発表するまで、僕も知らされていなかった。女子のうち何人かだけは知っていたようだが。突然目の前の光景がぼんやり歪み始めた。大人が決めたことに抵抗はできない。彼女は広島生まれで、その広島に戻るのだという。彼女もきっと複雑な気持ちだろうと想像した。「お前、ショックうけているのか?」と近くの男子に言われたが、力なく否定した。
最終日、僕はいつものように振る舞おうと、彼女をからかった。いつも通り、彼女に追われた。いつも通り捕まった。さあ、いつもの、と期待したが彼女は手を挙げない。
そして彼女が言った。「ねえ、言わんの?」僕は黙っていた。「バカっ!」という声と共に、僕の頭にいつもの拳 が落ちてきた。今までで一番痛かった。
[了]
小学校の時、好きな女の子がいた。小学生の愛情は、悪口やからかいとして表出されることがある。僕も彼女をよくからかっていた。彼女に追いかけられ、ゲンコツされることが楽しかった。先のことなんてほとんど考えていなかった。楽しい時間が、ずっと続くと思っていた。
ところが彼女は翌週、転校することになった。担任教師が発表するまで、僕も知らされていなかった。女子のうち何人かだけは知っていたようだが。突然目の前の光景がぼんやり歪み始めた。大人が決めたことに抵抗はできない。彼女は広島生まれで、その広島に戻るのだという。彼女もきっと複雑な気持ちだろうと想像した。「お前、ショックうけているのか?」と近くの男子に言われたが、力なく否定した。
最終日、僕はいつものように振る舞おうと、彼女をからかった。いつも通り、彼女に追われた。いつも通り捕まった。さあ、いつもの、と期待したが彼女は手を挙げない。
そして彼女が言った。「ねえ、言わんの?」僕は黙っていた。「バカっ!」という声と共に、僕の頭にいつもの
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