その13 皿の危険日

文字数 498文字

 孫娘がやってくる。車で十分程度の距離なのに、あまり顔を見せない。が、第三土曜は嫁の都合で預かっている。夕食までの大半を二人だけで過ごす。自分の子育てでは味わえなかった楽しみを、今経験させてもらっている。
 彼女が凝っているのはお菓子作り。男の子しかいなかった私は、牛乳をかけて冷やすだけのお菓子くらいしか作らなかった。張り合いがなかった。沢山作っていた学生時代の経験が、今ようやく活かされる。お婆ちゃん、すごい! と言われるのは、誇らしい。
 どこで覚えてくるのか、難しい横文字のお菓子に挑戦する孫。その勉強熱心さはさすが、私の孫だ。この前作ったガトーショコラは、しっとりとした食感が素晴らしく、この子は幼稚園時代の希望通り、お菓子屋さんになるのではないかと思ったほどだ。
 ところが後片付けを全くせずに帰ろうとする。こういう所はきっと嫁の血筋だ。しっかり(しつけ)をしようと思い、注意する。すると癇癪(かんしゃく)を起す。無理に皿を運ばせると、乱暴に扱い流しに投げ置くことがある。美的センスは私譲りなので、私のお気に入りだったウエッジウッドも被害にあった。

お気に入りの皿を貴女に割られるから 第三土曜日は皿の危険日

[了]
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