その1  部屋でワイシャツの私

文字数 496文字

目覚まし時計の音。
夜中のスマホがダメ、と部屋には置かないようにした。
だから、昔の映画に出てくるような円形の針時計だ。
目は開くんだけど、すっと起きられないよ。
クラクラする。うー。
どこかで母が聞いてきた体の起こし方をやってみる。
以前よりは楽な気がするけど、大して違わない。

制服は、昨晩もベッドの横に置いた。
脚を伸ばして座ったままの姿勢で、ティーシャツをまくる。
肌に触れる朝の空気は、ひんやりして気持ちいい。
そして肌着を頭に通す。

次が、これだ。
毎朝ピチッとアイロンがけされている、白いワイシャツ。
これを着て、「行ってきます」が言えない。
今日は袖を通せたけど……。

うっ、やっぱり腹が痛み出した。
立ち上がるとふらつく。でもこのままでは危ない。
苦しみながら立ち上がり、壁に寄り掛かる。
こうなり始めてから、部屋をトイレ近くに変えてもらったので、
少しだけ頑張れば、トイレに座れる。



なんとか間に合った。部屋に戻り、ベッドに潜った。
ワイシャツのままであることに気が付いたときは十時を回っていた。
この時間なら起きられる。
ズボンも穿いて、自室の机に向かう。

有り難う。
そう呟き、母が置いたであろうパンを頬張った。

[了]
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