その29 二十四のひがみ

文字数 499文字

 原田は一浪の末、地味な国立大学に入った。国立で凄い、親孝行だ、と褒められたが、本当は華やかな有名私大に行きたかった。数学も出来たので、大人は期待した。予備校も結局国公立コースにしてしまった。半端な自分でなければ、三教科に集中できる自分だったら、と今でも思う。
 その国立大学には、要領よく遊びつつ、結果を残す連中が多いと感じた。高校までは自分もそうだったはずだが、上には上がいる。上、といっても彼らはガツガツしていない。授業に出ずバイトや競馬に明け暮れている奴もいた。仲良くしようとは思えない。かといって原田は、経済理論に没頭したり、会計士の予備校に通うこともなかった。あの私大に行っていれば、野球、駅伝、学祭……。楽しいことが目白押しだった、と思う。きっと彼女もできただろう。

 バブルがはじけても連中は、有名企業から内定を得た。自分も大丈夫だと信じていたが、何故か最終面接以降の連絡はなかった。地銀にもフラれた原田は結局、バイト先だった補習塾で非常勤講師をしている。もちろん納得はしていない。
 どうせ俺は……。二十四歳の誕生日を職員室で迎えた原田は、世を恨み、他人を羨み、自分を卑下した。

[続く]
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