その22 おちょこじゃつらいよ
文字数 494文字
東京で一人暮らしを始めた。ワンルームで狭いキッチン付き。健康と家計のため自炊をしろと母は言う。鍋やフライパン、まな板、包丁までは分かる。が、すりおろし器や泡立て器まで送られても使いようがない。何度かスーパーで野菜や肉を買ったが、食べ切る前に変色した。家のことはしなくてよい、と先月まで言っていたのは確か母だったのだが。
電子レンジは大活躍だ。一人で食べる分量のレンジ商品が溢 れている。皿すら要らない。なのに棚には皿やコップが三人分。元々友達は多い方じゃない。だから三人分なんて絶対に不要だ、と思っていた。
地方出身の連中は寂しがり屋が多いのか、俺の部屋で飲もうと言ってくれる。ツマミと酒を持参して、男ばかりが集まる。気兼ねのない付き合いだ。
樽型の生ビールを買ってきたのは、川崎。大四郎という焼酎を抱えてきたのは光嶋。佃と森田はワイン。ワクワクしてきた。
まずはビール、と思うがコップは三人分しかない。でも、紙コップを買ってこようなんて思う奴は皆無だ。光嶋が棚からおちょこを二つ見つけてきた。全くあの母は、と思いつつ、感謝した。そして森田と俺は学んだ。ごく少量のビールは、不味 い。
[了]
電子レンジは大活躍だ。一人で食べる分量のレンジ商品が
地方出身の連中は寂しがり屋が多いのか、俺の部屋で飲もうと言ってくれる。ツマミと酒を持参して、男ばかりが集まる。気兼ねのない付き合いだ。
樽型の生ビールを買ってきたのは、川崎。大四郎という焼酎を抱えてきたのは光嶋。佃と森田はワイン。ワクワクしてきた。
まずはビール、と思うがコップは三人分しかない。でも、紙コップを買ってこようなんて思う奴は皆無だ。光嶋が棚からおちょこを二つ見つけてきた。全くあの母は、と思いつつ、感謝した。そして森田と俺は学んだ。ごく少量のビールは、
[了]