第41話 瑛斗3

文字数 774文字

テレビで流れるチキンのCMに、もうすぐクリスマスなんだと気づいた。




「ね、クリスマスはいっしょにいよーね!」

「…言うと思った」

「何それー!いっしょにいたくないの?」

「そんなことないけどさ」

休み時間にオレのクラスに来た彩奈が大げさにため息をつく。

「瑛斗ってさ、私のこと好きなんだよね?」

「どっちかといえば」

「ホントかなぁ?…うーん、まぁいいや、それでも。彼女は私だからねっ」

「はいはい」

彩奈が軽くオレの肩をパシッと叩く。
めんどくさそうな感じを装いながら、自然と笑顔になる。

彩奈には救われてる。

この2ヶ月、紗也は会ってもオレのことは完全無視。

その間、彩奈と過ごしてみてわかった。
冗談なのか本気なのかわからないことをお互いに言い合うこの関係がオレには心地いい。

いつでも明るい。
いつでも即決。
サバサバしすぎなほどサバサバしてる。
気持ちの全部をオレにぶつけてくる、
オレにはない全部。

彩奈には言わないけど、オレは彩奈のこと、どんどん好きになってる。

けど、心に引っ掛かってる紗也のことをそのままにして進むのは気持ち悪い。

彩奈と付き合うことにしたこと、紗也に伝えたい。

でも、その必要があるのか。

ハッキリと告白されたわけでもないのに、という気持ちもある。

オレは紗也のこと、幼なじみ以上には思えない。
この先も。

不必要に傷つけるだけじゃないのか。

紗也との関係を断ちたいわけじゃない。

幼なじみとして、大切。

恋愛はできないけど、大切な存在だってこと、伝えるのと伝えないのは、全然違う。

オレにとっても、紗也にとっても。

佑樹が紗也に想いを伝えるとしても。

そして、もし二人が付き合うことになっても。

幼なじみだ、ってずっと逃げてきたこの関係をハッキリさせようと思えたのは、彩奈がいたからだ。

彩奈のことが好きになったから。

彩奈とこれから付き合っていくために、絶対必要なことだと思った。

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