第40話 佑樹2

文字数 760文字

気持ちは揺れに揺れていた。

瑛斗のことなんかかまわずにいこうという気持ちと、紗也は瑛斗のために別れたんだという気持ちの間で、身動きがとれずにいた。

紗也の気持ちに本当に気づかないフリをしたままでいいのか。

…瑛斗より、こっちを向いてほしい。

ただ、今のままで告白なんてフェアじゃない気がする。

…格好なんかつけずに、気づかないフリをすればいい。

頭の中で自分の気持ちが戦ってた。


部活帰りの紗也を勝手に待つ。

「紗也」

「あ、佑樹」

「いっしょに帰ろう」

「え?待ってたの?めずらし」

「たまには」

紗也に彼氏がいた時間、ほとんど会わなかったのがウソみたいに、すぐに前のオレたちに戻った。

「ちょっと、寄り道しよ」

紗也が言って、またブランコに乗る。

「佑樹とこーやってると、小さいときとおんなじで変わらない気がする。落ち着く」

「そう?」

変わってないのか、紗也の中では。
瑛斗は変わってても、オレの位置は、ずっと。



揺れてた気持ちが、ピタリと止まった。



「…瑛斗さ、あの、彩奈ってコとつきあってないってさ」

紗也が、こいでたブランコを止めて驚いたようにこっちを見た。

「瑛斗に、告白するの?」

紗也はオレから視線を離してうつむいた。

「…しない。私はさ、瑛斗にとって男だったらいい存在なんだから」

「…そっか……じゃあさ、もう忘れれば」

「え?」

「もうさ、忘れなよ。瑛斗のことなんか」

「忘れるって…」

紗也が軽く笑う。

けど、オレは笑わない。
「瑛斗を好きなことなんか、忘れればいいんだよ。ただの幼なじみに戻ればいいんだよ」

紗也も、笑うのをやめた。

「…そだよね。そうできるなら、したいんだよ、私も」

その言葉に、ハッとする。



オレだって、同じだ。

紗也のこと、幼なじみだと思えるなら、とっくにそうしてた。


同じじゃないか。



それからオレたちは、無言で月を眺めながら、ブランコをこいだ。






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