第4話 佑樹④
文字数 1,325文字
「あ~ほんとガッカリだったー!佑樹と勝負したかったのにな!」
瑛斗は運動会の後、何度も言って悔しがった。
チームが負けたことより、二人で走れなかったこと。
オレもそれは少し心残りだった。
アンカーに選ばれた頃から、瑛斗は一緒に帰ろうとオレを誘うようになっていた。
それまで忘れてたみたいに過ごしてたのに、オレたちのことを思い出したみたいに、放課後一緒に過ごすことも増えた。
「もうすぐ中学だからさ、小学校の最後の年は3人でいたいよな」
そんな風に言った。
オレも同じだった。
けれど、昔とはもうきっと違ってたんだ。
オレと紗也には二人で過ごした時間の積み重ねがあった。
紗也は急に戻った3人の関係に戸惑ってるみたいに見えた。
オレと二人でいるときはいつもと同じだけど、瑛斗とは少し間をあけて歩く。
それなのに、瑛斗のことばかり見てる。
モヤモヤした。
その年のバレンタインもまた、オレたちは同じチョコを紗也からもらって、オレはまたホワイトデーに動物型の、今度はクッキーを渡した。
去年、紗也がかわいいと言って喜んだから。
モヤモヤを抱えたまま、また坂の上の学校に入学した、中学生の春。
3人ともバラバラのクラスになった。
部活も別だ。
瑛斗はもちろんバスケだし、紗也は吹奏楽、オレは陸上だ。
でも、オレの紗也に対する接し方は変わらなかった。
紗也の吹奏楽のコンサートがあれば1人で見に行った。
紗也はオレの部活を見に来ることもあったし、オレと一緒に瑛斗の試合を見に行くこともあった。
帰りはあまり一緒にならなかったけど、会えば一緒に帰ってたし、オレたちが付き合ってるんじゃないかってみんな噂した。
違うと否定しながらも、嫌な気持ちは全くしなかった。
紗也といるのは当たり前のことだったし、紗也は誰とも違う特別な存在だったし、これが好きだとかいう感情なのかはわからなかったけど、そうなのかなという気もしていた。
だから、驚いた。
2年になって、紗也に彼氏ができたときは。
相手は同じ吹奏楽部の男子だった。
1年の頃は紗也と同じクラスだったらしい。
よく知らないけど。
それでもオレはまだ、紗也はオレと瑛斗にとっては特別だと信じていた。
彼氏よりも、特別なんだと。
家に帰ると、紗也と瑛斗のお母さんが来ていた。
「あ、おかえりー」
「ゆうちゃんおかえりー。あらもうこんな時間なのね、帰らなきゃ」
「瑛斗もそろそろかな」
母さんたちは3人の家のどこかに集まってよくしゃべってた。
「ねえ佑樹、知ってたー?紗也ちゃん、彼氏できたんだって!」
「あー、知ってる」
「そうなの、びっくりよ、もう!彼氏ならずっと2人もいたのにねー」
「いやいや、幼なじみは別でしょー、まあ、ゆうちゃんならあるかもしれないけど、うちの瑛斗はバスケバカだから、彼女なんてまだまだ!」
「佑樹はいないの?彼女」
オレは母さんの言葉を無視して部屋にあがった。
「照れちゃってー」
階段を上りながら、まだ階下の声が聞こえる。
「佑樹だって紗也ちゃんが彼女みたいなもんだと思ってたんだけどねー」
バタンと音をたてて自分の部屋のドアを閉めた。
なんだ。
なんだってこんなにモヤモヤするんだろ。
ベッドに寝転がりながら、天井を見るともなく見ていた。
彼女、彼氏。
その言葉がこんなにも近くなっていた。
★
瑛斗は運動会の後、何度も言って悔しがった。
チームが負けたことより、二人で走れなかったこと。
オレもそれは少し心残りだった。
アンカーに選ばれた頃から、瑛斗は一緒に帰ろうとオレを誘うようになっていた。
それまで忘れてたみたいに過ごしてたのに、オレたちのことを思い出したみたいに、放課後一緒に過ごすことも増えた。
「もうすぐ中学だからさ、小学校の最後の年は3人でいたいよな」
そんな風に言った。
オレも同じだった。
けれど、昔とはもうきっと違ってたんだ。
オレと紗也には二人で過ごした時間の積み重ねがあった。
紗也は急に戻った3人の関係に戸惑ってるみたいに見えた。
オレと二人でいるときはいつもと同じだけど、瑛斗とは少し間をあけて歩く。
それなのに、瑛斗のことばかり見てる。
モヤモヤした。
その年のバレンタインもまた、オレたちは同じチョコを紗也からもらって、オレはまたホワイトデーに動物型の、今度はクッキーを渡した。
去年、紗也がかわいいと言って喜んだから。
モヤモヤを抱えたまま、また坂の上の学校に入学した、中学生の春。
3人ともバラバラのクラスになった。
部活も別だ。
瑛斗はもちろんバスケだし、紗也は吹奏楽、オレは陸上だ。
でも、オレの紗也に対する接し方は変わらなかった。
紗也の吹奏楽のコンサートがあれば1人で見に行った。
紗也はオレの部活を見に来ることもあったし、オレと一緒に瑛斗の試合を見に行くこともあった。
帰りはあまり一緒にならなかったけど、会えば一緒に帰ってたし、オレたちが付き合ってるんじゃないかってみんな噂した。
違うと否定しながらも、嫌な気持ちは全くしなかった。
紗也といるのは当たり前のことだったし、紗也は誰とも違う特別な存在だったし、これが好きだとかいう感情なのかはわからなかったけど、そうなのかなという気もしていた。
だから、驚いた。
2年になって、紗也に彼氏ができたときは。
相手は同じ吹奏楽部の男子だった。
1年の頃は紗也と同じクラスだったらしい。
よく知らないけど。
それでもオレはまだ、紗也はオレと瑛斗にとっては特別だと信じていた。
彼氏よりも、特別なんだと。
家に帰ると、紗也と瑛斗のお母さんが来ていた。
「あ、おかえりー」
「ゆうちゃんおかえりー。あらもうこんな時間なのね、帰らなきゃ」
「瑛斗もそろそろかな」
母さんたちは3人の家のどこかに集まってよくしゃべってた。
「ねえ佑樹、知ってたー?紗也ちゃん、彼氏できたんだって!」
「あー、知ってる」
「そうなの、びっくりよ、もう!彼氏ならずっと2人もいたのにねー」
「いやいや、幼なじみは別でしょー、まあ、ゆうちゃんならあるかもしれないけど、うちの瑛斗はバスケバカだから、彼女なんてまだまだ!」
「佑樹はいないの?彼女」
オレは母さんの言葉を無視して部屋にあがった。
「照れちゃってー」
階段を上りながら、まだ階下の声が聞こえる。
「佑樹だって紗也ちゃんが彼女みたいなもんだと思ってたんだけどねー」
バタンと音をたてて自分の部屋のドアを閉めた。
なんだ。
なんだってこんなにモヤモヤするんだろ。
ベッドに寝転がりながら、天井を見るともなく見ていた。
彼女、彼氏。
その言葉がこんなにも近くなっていた。
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