第47話 佑樹

文字数 896文字

26才になった。

中3でオレは早坂と同じクラスになり、気の合うオレたちは親友になった。
その時、紗也と早坂がまた付き合い始めたと知った。切なかったけれど、早坂ならとも思えるようになっていた。

それからオレたち幼なじみ3人は別の高校へ進学した。

オレと早坂は一緒で、紗也は別の高校だった。瑛斗はカノジョと同じ学校に通っていた。
瑛斗は坂の下を下りてくし、オレと紗也は坂を上ってくから登下校にはよくすれ違って、時々話した。時々3人ばったり会うと公園で話し込んだりもした。

前よりも、3人だと感じた。

紗也はその後変わらずに早坂と付き合い続けて結婚し、去年の暮れに彼の海外赴任についてった。

「早坂紗也ってさ、言いづらいんだよね、早口言葉みたいで」
そんな風に言ってたけど、幸せそうだった。



瑛斗はスポーツ用品店に勤務し、ずいぶん前からあのカノジョと暮らしてる。
別れるとか別れないとかしょっちゅう言ってたのに、この前会った時に子どもができたと言われ、オレは口に含んだビールをコントみたいに吹いてしまった。
結婚式には紗也も帰ってくるはずだ。



オレは3年勤めた小学校から転任し、この春から母校の小学校に勤務することになった。

彼女はいるのか、結婚しないのかと言われることを除けば気楽な実家暮らしだ。

みんなずいぶん早くに運命の相手と出会ったもんだ。
オレは何人かと付き合ってみたけれど、今は新しい生徒たちのことで頭がいっぱいで、恋愛どころではない。

入学してくる子どもたちを見て、あの1人1人にはどんな物語があるのだろうかと胸の中が熱くなる。


この坂道から動けないでいるのは、結局オレだけ。

紗也と話したあの公園。
ほとんどが日が沈んでからの帰り道だけど、たまに夕日が見える時間帯に通り過ぎると、紗也とブランコに乗った記憶が蘇り、あの頃の切なさが込み上げる。

けれど、それは嫌ではない。

切なさも含めて全部、
あれが、オレたちの青春だったんだから。


坂の上に瑛斗の家がある。

坂の下にオレの家がある。

坂の途中に紗也の家がある。


そう言えた頃が、幸せだった。


そして、それぞれが自分なりの答えを出して進んできた、その思い出のある今も、やっぱり幸せなのだ。



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