第44話  瑛斗6

文字数 1,068文字

公園から家に帰ると、すぐに彩奈に電話したけど、出なかった。

『会いたい』と打ち込んで、すぐに消す。

『明日、いっしょに帰ろ!』
オレにはこれが精一杯。

既読にもならない。



次の日、彩奈は学校を休んだ。

『体調悪いの?』

これにも既読ナシ。


放課後、彩奈に電話した。
既読にもならないのに出るわけないと思いながら。


『はい、もしもし』

「え!あ、もしもし!」

不意打ち。
言うこと決めてないし!

『何?』

いつもの感じじゃない。

「あ、なんで休んだの?」

『瑛斗には関係ないでしょ』

「え?なんで?関係あるよ」

『どーゆー関係があるの?』

「だって、オレたち…」

『何?』

「付き合ってんだよな?」

『疑問形』

「や、付き合ってるし!」

『そーなの?』

「え…じゃないの?」

『だって、あたしを振り払って他の女の子追っかけたじゃん。あのコ、前に言ってた幼なじみのコでしょ。やっぱあのコが好きなんじゃん』

「違う!」

『違うの?どう違うの?』

「オレは………いや、会ったときに言う」

『会えると思ってんの?』

「え?どーゆー意味?」

『もしもう2度とあたしが学校に行かなかったらどーする?』

「家に行く」

『家も引っ越しちゃってたら?明日にはもう誰もいないかもよ?』

「………じゃあ…今から行く、着いたら電話するから」

そう言って一方的に電話を切って、彩奈んちまで走った。

家の前に着いたと連絡しようとしたとたん、2階の方から彩奈の声が聞こえた。

「瑛斗ー!待ってて!今行くー!」

彩奈がスウェットの上からコートだけ羽織って走ってきた。

「何オマエ、やっぱ仮病じゃ…」

言い終わる前に彩奈が飛びついてきた。

「もー、やっぱ無理!いじめてやろーと思ったのに…家まで来るなんて、瑛斗、あたしのこと好きなんじゃーんっ!」

しがみついたまま、全身バタバタ揺らしながら、彩奈が言った。
いつもの彩奈だ。

「…だから言ったじゃん、好きか嫌いかで言ったら好きだって」

「まだ言う?それ」

「…あのさ、今度、指輪買いに行こうか、安いのしか買えないけど、お揃いのやつ」

「…でも、イヤなんでしょ?」

「…イヤだよ、彩奈と以外は」

飛びついた彩奈の腕にもう一度、ぎゅっと力が入った。

「ついでに、左手にしとく?」

これ以上ないくらいに強く抱きつかれ、それでももっとくっつきたいというように彩奈は力をこめる。

「そんなこと言ったら、もー絶対離れないからねっ!後悔しても遅いよ!」

「あ、もー後悔してきた」

「もー遅いよ!」

二人で笑って、オレだって絶対離れないと、口には出さないけど心の中で思った。

それが伝わるように、オレも彩奈をぎゅっと抱きしめた。



運命がまた、前に進んだ。


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