第37話 佑樹1

文字数 578文字

瑛斗から、紗也との話をざっと聞いてオレは言った。

「それ、瑛斗が悪いよ」

「えっ、なんで?」

「女子に『男だったら良かった』はないでしょ」

あまりにも紗也がかわいそうだ。

「だって今さらさ、いっしょにいるからって付き合ってるとか何とかって…」

「瑛斗さ、女バスの…名前、なんだっけ、よく一緒にいるじゃん、あのコと」

「彩奈?」

「そう、付き合ってんの?」

「付き合ってはないけど」

「でもそー思ってるヤツいっぱいいるよ?それは嫌じゃないの?」

「…紗也は彩奈とは違うから」

「…紗也だって女の子じゃん、あのコと何が違うんだよ」

「…オレはそんな風に考えらんね。紗也のことはずっと…妹みたいにしか思えねーよ」

瑛斗の態度に苛立ちが募る。
オレでこうなんだから、紗也はどれだけ傷ついただろう。

「…じゃあさ、この先、紗也がまた誰かと付き合っても、瑛斗は何ともない?」

「…紗也を傷つけなければ」

「じゃ、オレでも?」

「え?何言ってんの?」

瑛斗が笑う。
けど、オレは笑わない。


「…え、マジ?」




3人でいたかった。

けれど、もうオレたちはいつの間にか3人でなくなったこと、もう知ってる。

紗也が笑っていられるなら誰と一緒でもいいなんて、そんなにオレは大人じゃない。

紗也が今1人なら、
瑛斗が紗也の想いを受け止めるつもりがないなら、
オレは全力で紗也をつかみにいきたい。



紗也の気持ちに、気づかないふりをしながら。




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