第13話 瑛斗⑧

文字数 621文字

2年になった。

「瑛斗ー!一緒に帰ろー!」

部活のない日、彩奈がオレのクラスのドアのとこまで来て、大声で叫ぶ。


あれから彩奈はよくこうして迎えに来る。

別にふつーの友達だから、帰れるときは帰るし、帰れないときは断った。

思った以上に彩奈はあっさりしてて付き合いやすい。

付き合いやすいと言っても、恋人になれるかどうかとは別だ。

そんな気持ちはやっぱり湧いてこない。

紗也と玄関で会った。

紗也がこっちに気づいて口を開いたとき、彩奈が靴を履いてこっちに回ってきた。
「ねー瑛斗、どっか寄り道して帰らないー?」

紗也は彩奈を見て、サッと靴を履いてこっちも見ずに玄関を出た。

オレの視線の先を見た彩奈は紗也の方を振り返った。

「え、何?あの子のこと好きなの?」

「は?何でそーなるわけ?」

「だって、追ってるじゃん、目で」

「幼なじみだし」

「そ、まぁいーけど。寄り道する?しない?」

「…しない」



紗也のことは好きだ。
けど、それは佑樹への好きと変わらなかった。
大切だってことだ。
兄妹みたいなものなんだ。
そう、恋愛感情じゃない。
それは自分でもわかっていた。



それからしばらくして、紗也に彼氏ができたと母さんに聞いた。

それが佑樹でなかったこと。

それにオレは安心したのかな。
何で佑樹じゃないんだよという気持ちもあったし、自分の気持ちがわからなかった。

何で、紗也、彼氏なんか作ったんだろ。

紗也も、男だったら良かったのに。

そしたらオレたち、離れてもきっとすぐに戻れる、特別な3人でいられたのに。



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