第3話 佑樹③

文字数 844文字

バレンタイン。

毎年もらってた紗也からの義理チョコが今年もやってきた。

家に持ってきた紗也に言った。
「ありがと。…瑛斗んちはもう行ったの?」

「まだ。これから」

「…オレも行こうかな、久しぶりに」

「そ?じゃ、行こ」

瑛斗んちに着くと、紗也はチョコを取り出した。

オレと同じ。
小さめの正方形の箱だ。
何となくホッとした。


3月のホワイトデーには、動物の形のマシュマロをお返しに渡した。

意味なんてない。
ただ、動物の形が紗也の好きそうなものだったからだ。



小学6年の運動会。

オレも瑛斗も、リレーの選手に選ばれた。

二人ともアンカーだ。

発表があったその場で、瑛斗が言った。
「マジで~!なんで佑樹(ゆうき)なんだよー!…まぁ、でも相手がお前でも、手加減しないからな!」

「当たり前だろ!オレだってぜっっったい負けないからな!」

笑いながら、瑛斗はオレの肩にガシッと手を回してきた。

一緒にいる時間は減っても、オレたちは特別だった。
いつだって、離れた時間なんかないみたいに元に戻れた。

紗也も男だったら良かったのにな、とオレはまた思ってた。

そしたらきっと、紗也も入れて3人いつまでも肩を組んでいられる気がしていたから。


運動会がやってきた。

3クラス対抗だ。

もう1つのチームはだいぶ遅れていて、オレと瑛斗のチームは接戦だった。

けど、3走者目からオレたちのクラスが少し遅れをとり始めた。
5番目でバトンを落とし、だいぶ遅れた。
そのまま、オレたちの二人前の走者になった。

そこで瑛斗のチームの5年生が転んだ。

その間に、オレのチームが巻き返す。

そのまま、オレの前の走者だ。

いける!

好調のままバトンを受け取り、駆け抜ける。

瑛斗の気配がないまま、オレはゴールした。


勝った!


そう思ったとき、オレが見たのは、瑛斗ではなく、紗也だった。

あんなに人のいる中、どうして紗也をすぐに見つけることができるのか。


わからないけれど、オレの目には紗也だけ色がついているみたいにすぐに見つけることができる。



そして。


紗也が見てたのは、こっちじゃない。



まだ走っている、瑛斗だった。



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