第38話 瑛斗1

文字数 842文字

佑樹は、笑わなかった。

オレが紗也を妹みたいにしか思えないのはほんとのことだ。

佑樹が紗也と付き合ってれば安心だって、ずっと思ってた。
けど、もしかしたら、紗也が傷ついたりしないとわかってれば、あのまま吹奏楽部とでも良かったのかもしれない。

とにかく安心な誰かに紗也をガッチリ捕まえといていて欲しかった。
それはきっと、そうじゃないと紗也が幼なじみの境界線を越えて俺の気持ちを確認しようとするからだったのかもしれない。

俺はそれに応えるのが怖かった。
3人が3人でなくなるのが、嫌だった。

でも、佑樹が紗也に気持ちを伝えたってもう同じことだ。



3人を卒業しなきゃいけないのかもしれない。


「何タソガレてんの?」
彩奈が横から急にオレの顔を覗きこんだ。

「うっわ!」
部活中、校内を走って一周してたはずなのに、気づいたら廊下の窓から見える小学校のグラウンドを見てボーッとしてた。

「サボり?なんか、フラれたよーな顔してる」

「フラれる相手がいない」

「あっそ。あのさ、来月ハロウィンパーティーしない?」

「うーん」

「しよーよ!決まりねっ!」

彩奈は笑って走ってった。
彩奈のペースには毎回巻き込まれる。
まぁいっか、いい気分転換になるかも。

何か1つを考えとけば、オレはそっちに集中できるはずだから。




1ヶ月はあっという間だ。

「え?彩奈ん家?」

「うん、親は遅くまで帰ってこないしさ、気兼ねなく!」

「あと誰来んの?」

「うーん、いろいろ!」

「わかった。じゃ、放課後ー」

放課後、彩奈といっしょに帰る。
「オレなんも持ってきてないからさ、お菓子どっかで買いたいんだけど」
スーパーに寄って袋菓子をいくつか買う。

彩奈んちに着いた。
「テキトーに座ってて!」

彩奈の部屋に通されたけど、考えてみたら紗也以外の女子の部屋なんて初めてだ。

紗也の部屋だって幼稚園時代に入ったきりだ。

何となくソワソワ落ち着かない。
ジュースとお菓子を持って彩奈が上がってくる。

「意外と女子の部屋って感じでしょ?」

「え、まぁな。…なぁ、みんな、いつ来んの?」

「来ないよ、誰も」

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