第17話 紗也②

文字数 596文字

4年生になると、瑛斗とはクラスも離れた。

佑樹とは登下校も放課後もいつも一緒だった。

それでも、廊下ですれ違うとき。
体育や音楽で同じ空間にいるとき。
私は、瑛斗を探してた。

毎日顔が見られなくなったから余計に瑛斗のことが気になった。

目で追ってなくても、どのあたりにいるのか。

一目でも、
ちらっとでも見たいって、この気持ちは何だろ。

この気持ちは、佑樹に感じることはない。
きっと佑樹とはいつも一緒にいるから。



5年生になってから、みんなはやたらと好きな人の話をするようになった。

宿泊学習の夜はその話でもちきりだ。

好きな人って言われて思い浮かべるのは…瑛斗?佑樹?

どっちもだ。

けど、みんなは1人しか言わない。
そもそも、みんなの言う「好きな人」と私の思う「好きな人」って、同じなのかな。

そう思って、みんなの話を聞いてると
「ドキドキして話せない」とか
「目が合うだけでうれしい」とか
「今日のフォークダンスで手をつなぎたかった」とか。

佑樹にこんなことを感じることはない。
けど、瑛斗には…。

じゃあ、私の好きな人って、瑛斗?

…なのかも。


そう思うと、
急に瑛斗のことが気になって、
今の瑛斗を知りたくなって、
話をしたくて、
一緒に写真に写りたいし、
手をつなぎたいし、
一緒にいたい。


けれど、私がそのことに気がついたまさにその時、友達が言った。
「私、1組の瑛斗くんが好きなんだよねー」

そして私の恋心はシュッと胸の奥へ収まっていった。








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