第22話 紗也⑦

文字数 632文字

期待ハズレでガッカリしながら答えた。
「…ケーキ。作ったやつ」

「え、すげーな、作れんだ、紗也」

「まぁね、意外とできた。」
ちょっと回復。
ほんとはまる1日かかったけど。

「佑樹もケーキ好きだからな」

佑樹?いつもと同じだと思ってる?
なんで?
「…ケーキは……瑛斗の。佑樹には違うのあるから」

「えっ、なんでだよ、佑樹にもあげれば?」

全っ然伝わってない。
わかってない。
期待してバカみたいだ。

「じゃ、佑樹んち行くから」

「……おー、じゃあな」

玄関のドアを閉めたけど、やっぱり言わなきゃいけないと思って、すぐにもう一度ドアを開けた。

「佑樹には、瑛斗と同じチョコだって言うから」

「…へ?」

それだけ言って、ドアを閉めた。
だって違うんだ。
いつもと同じだと思われちゃ、困るんだ。
ちゃんとわかってよ。
いくらなんでも、わかるでしょ。

わかれ!鈍感!


それから佑樹の家へ行った。

「瑛斗んちは?これから?」

「今年はもう渡してきたよ」

「そっか…毎年ありがと」

「…毎年二人おんなじだけどね」

佑樹はちょっと笑った。


瑛斗は、どう思ってるだろ。

ホワイトデーにきっと、答えは返ってくる。





瑛斗に伝わってることを期待してたホワイトデー。

先に来たのは佑樹だった。

「これ。去年のと似てるけどさ、去年かわいいって言ってたから。紗也の好きそーなやつ」
駅前のお菓子屋さんの動物型のクッキーだ。

今年は瑛斗がお母さんに渡して帰らないように、インターホンの側でスタンバってた。

インターホンから「瑛斗!」と聞こえてすぐに玄関へ走ってった。




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