第28話 紗也⑬

文字数 797文字

映画を見て、ハンバーガーを食べて、雑貨屋を見て回ってるとき、早坂くんが言った。

「なんか、お揃いの物、買わない?」

わ。なんか、恥ず…。
そう思いながらも、うなずいてしまった。

「…やった!」

この顔が見たくて。

私、ちょっと早坂くんのこと、好きかも。

ペアのキーホルダーを一組買った。
ハートを半分とか、いかにもペアみたいのだったらどーしよーと思ったけど、早坂くんはさすがのセンスの良さで、パズル型の2つ組み合わせればカチッとハマるシンプルなプレートのを見つけて私にどうか聞いたので、それに決めた。

早坂くんのが黒で私のは白だ。
「これ、学校のカバンにつけよっと」
早坂くんが言った。

早坂くんて、私のこと、ほんとに好きなんだ…と、顔が熱くなってくのを感じた。

なんで?って思いはかなりあったけど、好きってそんなもんだよね。
なんでって理由なんかないよね。

瑛斗のことも、ただ、気がついたら好きだったし。


雑貨屋を出て歩いてると、ふわっと手を包みこまれた。
ほんと、「ふわっと」。
大事なものを、受け止めるみたいに。


早坂くんて………
ほんとに私のこと、好きなんだなぁ。


気持ちが、ごちゃごちゃだ。


早坂くんのことが間違いなく好きなら、こうして手をつなぐのも嬉しいはずで。

お揃いの物なんてほしくて仕方ないはずで。

初めてのデートに、何を着たらいいか悩むはずで。


そう、まず好きだと言われたなら、何より嬉しかったはずなんだ。


早坂くんのこと、好きになれそうな気はする。


けど、100%前に進めないこの気持ちは。


きっと、瑛斗が私をどう思ってるのか、少しもわかってないからなんだ。


たぶん、好きではないはずで、
たぶん、幼なじみとしか思ってないはずで、
たぶん、佑樹のことと同じようにしか考えてないはずで、

全部が「たぶん」だからだ。



前に、進みたい。

そのためにはハッキリと、瑛斗への気持ちに区切りをつけなきゃいけない。



100%で早坂くんに、向き合うために。


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