第2話 佑樹②

文字数 972文字

5年生。

急に背が伸びたオレは、後ろの席になることが多くなった。

後ろの席から、紗也の後ろ姿をよく見てた。

クラスで並んだ時も、ちょうど紗也の後ろ姿が見える。

体育や音楽では、隣のクラスといっしょになる。

全校朝会、学年集会。
そんな時だ。
紗也がいつもソワソワとするのは。

チラチラと隣のクラスの方を向く。

最初はわからなかった。

でも、わかったんだ。

瑛斗が集会で司会になり、前の方に出てくのを、紗也はずっと目で追っていた。

けど、特別なこととは思わなかった。
オレだって、瑛斗のことは気になるから。
オレたち3人は、特別なんだから、そんなの当たり前な気がした。

学校の行き帰り、紗也はよくしゃべるようになった。


「ねえ、後期の委員会、決めた?」

「…まあ」

「何にする?」

「体育委員かな」

「そっか」

「紗也は?」

「集会かな………瑛斗は、何だと思う?」

「さあ。聞いてみれば?」

「…そだね」

「クラブは?」

「体育委員になれたらー、イラストとか描くやつにしよっかなー。なれなかったらバスケかサッカー。紗也は?」

「手芸がいいな」

「へー、バドミントンとかかと思った」

「…瑛斗は何だろ」

「バスケじゃない?絶対バスケ!じゃなくてもサッカーとか、運動系でしょ」

「…そだね」


オレは体育委員になり、イラストクラブに入った。

瑛斗はバドミントンクラブになった。

後で知ったけど、バスケチームに入ってる人はクラブは違うものにしなきゃダメらしい。


そして、紗也はバスケクラブになった。



「手芸って言ってなかった?」
何だかどうしても気になって、帰り道、紗也に聞いた。

「第一希望はね。第二希望になっちゃった。」

「…そっか」


そんなこと、あるかな。
バスケの方が人気があったんじゃないか。

「瑛斗、バドミントンだったね」

「そだね」

紗也はどこか別の方を向いて答えた。
どんな顔をしてたのか、見えなかった。




クラブの日だけ、紗也は瑛斗と帰るようになった。

体育系のクラブは後片づけがあったからいつも遅くて、オレは先に帰った。


最初の1度だけ、二人が後ろから来るのが見えたけど、紗也の顔がいつもと違う気がして、坂を走って下って帰った。


別に、普通に話しかければ良かったのに。


自分の心の中のモヤモヤが何なのか、オレはわかっていなかった。

ただ、紗也も男だったら良かったのに、と思った。

なぜだかはわからないけど、ハッキリとそう思っていた。


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