第33話 紗也⑱

文字数 608文字

あれから2ヶ月。

私たちは変わらない毎日を過ごしてた。

でも、ブレスレットをもらった日から私は「実験結果」を早坂くんに伝えようか、伝えるならいつがいいのか迷ってた。

早坂くんからその話をすることはなかったし、毎日優しくしてくれる彼に話すきっかけがなくて、モヤモヤしたまま時間だけが過ぎた。


だから神様が怒ったんだろな。

はっきりしない私に。

あんないい人といっしょにいさせてくれたのに。




ホームルームの後、早坂くんがクラスに迎えに来た。

「いっしょに帰ろう」

早坂くんは、人目も気にせず、学校の中なのに私の手を握って歩きだした。

どうしたんだろ。

「…あのさ、ちょっと、話したい」

「…うん、わかった」

この前と同じ、坂の公園のベンチに座った。

風が寒くなってきた。

早坂くんがカバンからマフラーを取り出して、私の首にかけた。

「ありがと…マフラー、用意してたの?」

「うん、寒くなるかなと思って」

ほんと、気がきく人。

「……あのさ、昨日、紗也んちまで送った後さ、坂の上の方で、うちの中学のヤツに声かけられたんだ」

「…うん」

「紗也の幼なじみって言ってた」

「…え?」

坂の上。

瑛斗?
それとも、降りてく佑樹?

「そいつにさ、紗也の彼氏?って聞かれて、そうだって言ったらさ」

「…うん」

「『大事にしてやって』って言うんだ、そいつが」

「…えっ」

瑛斗?
佑樹?
佑樹の方が言いそう。
瑛斗がそんなこと言うのは想像できない。


「でさ、そのまま家に入ってったんだ」



瑛斗だ………!







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