第三十九話、バー
文字数 1,764文字
イーサンとエドワードは、フィルクス通り二番地、少し奥にあるバー、ロイドに来ていた。曇りガラスの窓を見ると、中で店の掃除をしている店主の姿が見えた。扉のノブには準備中とかかれた板がぶら下がっている。
失礼、とイーサンはつぶやきドアを開けた。
たばことアルコールの匂いがした。
少し怯えたような雰囲気で店主が答えた。何枚か窓ガラスが新しくなっており、入り口付近の壁と床には血痕の汚れがかすかに残っていた。
イーサンとエドワードはバッチを見せた。
店主はエドワードを見た。
覚えていないんですよ。店主は首をかしげた。
イーサンは、店の入り口を指さした。
カウンターの一つを指さした。
店の裏口から出ようと思えば、カウンターを乗り越えなければならない。
エドワードは入り口付近の柱の近くに立った。
店主は伝票をあさった。
店主は、ぼんやりとした顔をした。
店主は恐怖に怯えたような引きつった顔をした。
それからしばらく話したが、それ以上の話は引き出せなかった。
イーサンとエドワードは店を出た。
目の色や髪の色などは覚えていなかったが、およその年齢と口ひげが生えていたことは覚えていた。
それから何件か、近くのバーで、四十代ぐらいの口ひげを生やした顔が覚えられない客の話を聞いて回ったが、覚えていないのか、きていないのか、そんな奇妙な客の目撃証言はなかった。
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