第六話、橋脚
文字数 2,600文字
翌日、イーサンとエドワードは、チャック・ケードが殺害された現場に向かった。泊まっているホテルから徒歩で三十分ほどいったところである。
イーサンは歩きながらエドワードが肩からさげている鞄を見た。中には杭打ち銃が入っている。
エドワードは鞄をなでた。
エドワードはうれしそうに言った。
エドワードは自分の頭を指でさしながら言った。
「それは効くよ。だけど、下手に杭を打ち込んで目覚めさせるより、太陽に当てた方が安全だよ。日があるうちは簡単には目は覚まさないからね。部屋の中に入って窓を開けた方がいい。太陽の光に直接当たれば吸血鬼は終わりだ。昼間でも闇の中では、まだ吸血鬼なのだからね」
エドワードは落ち込んだ表情を見せた。
「いや、そんなことも無いよ。全く使えないわけじゃない。侵入者を探知する魔法を使っている吸血鬼もいる。部屋の中で眠い目をこすりながら待ち構えている場合があるからね。その場合は、そいつで戦うしかない。ただね」
イーサンとエドワードは、ミグラス市南西の、チャック・ケードが殺された橋の下にたどり着いた。下水から流れる水が、悪臭を放っていた。
橋のたもと、橋を支える柱と川の間の二メートル程度のスペースにチャック・ケードは暮らしていた。チャック・ケードの荷物はすべて撤去されているが、どこか生活の痕跡のような物が見て取れた。
エドワードは川と橋脚の間の土台部分に立ちながら言った。
橋脚の根元、コンクリートに水の跡のようなものがあった。
橋の横には、斜面があり、川沿いに道があった。
「橋脚を見たまえ、コンクリートに血痕の跡と、こすったような跡がある。チャック・ケード氏は百六十センチ程度だが、この肩口をこすったような跡はもっと高い位置にある。推測するに、百七十五から百八十五センチの人物だ」
この付近は治安がいいところとは言えない。町の灯りから少し離れ、売春宿や賭博場などがひっそりとあった。目撃者がいたとして警察に名乗り出るとは限らない。
「夜中の移動手段は限られている。チャック・ケード氏が殺されたのが夜中の二時、日の出が、六時頃だとして、移動できる時間はおよそ四時間、もし、この事件が吸血鬼の仕業なら、その吸血鬼の寝床は四時間で移動できる場所にあるということだ」
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