第三十二話、飛行船
文字数 1,160文字
食事を終え、エドワードは良い気分で木陰でうとうととしていた。
イーサンの声にエドワードは目を覚ました。
空を見上げると、豆粒のような物体が浮かんでいた。
ゆっくりと、こちらに近づいていた。
パメラ・モートンは微笑んだ。
ポーラ・リドゲードも飛行船が近づいていることに気がついていた。
使い魔を屋根の上に登らせ、視覚を共有した。
アーモンド型の飛行船がこちらに向かって近づいてきているのが見えた。
飛行船はゆっくりと近づいてきた。
まるで鯨のような巨大な白い袋の下に、窓がいくつか付いた木造の建造物がぶら下がっている。
イーサンが無線機で呼びかけた。
ヒーゲルは戦術班の人間である。
飛行船の窓を開け手を振った。
無線を切った。
肩をすくめた。
飛行船は、ポーラ・リドゲードのいる屋敷の百メートルほど上空で、静止した。
無線が入った。
ヒーゲルは飛行船の窓から時限式の爆弾を投下した。風に煽られながらも、屋根に落ち、しばらくして爆発した。屋根瓦が吹き飛び、屋敷全体が揺れた。次々と投下される。爆発する。いくつかは外れ庭に落ちた。屋根が壊れ穴が空く、そこに爆弾が転がり込む。窓ガラスが割れ、壁が吹き飛んでいく、徐々に壊れていく。ブレアと共に暮らした家が壊れていく様を、使い魔を通してポーラはただ見ていた。
笑った。
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