第九話、吸血鬼の屋敷
文字数 1,838文字
イーサンは一軒の家の前で立ち止まった。
エドワードは言った。
エレン・フィッシャーの家から、五キロほど離れた場所にある郊外の一軒家である。
イーサンは手のひらの上にコインを一枚のせていた。そのコインが、かすかに揺れていた。イーサンとエドワードはコインを手に、エレン・フィッシャーの家の周辺を朝から夕方まで、ひたすら歩いていた。三日ほど歩きここにたどり着いた。
吸血鬼時代に魔力を込めて作った銀貨である。コインにはイーサンによく似た若い男の横顔がかかれていた。
エドワードは背伸びした。石垣に囲まれ、外から中の様子は見えない。かろうじて赤い屋根が見える。
三日ほど調べた。石垣に囲まれた赤い屋根の屋敷の持ち主は、ジェフリー・グレン、元大学の教授だったが三年ほど前にやめている。その前後に、この屋敷を購入している。土地と建物の持ち主をさかのぼってみたが、何人か代理人を挟んでいるらしく、途中でわからなくなった。付近の住人に話を聞いたが、ジェフリー・グレンをあまり見たことが無いそうだ。夜以外は。
エドワードはジェフリー・グレンの屋敷を見ながら言った。
血を分け与えた吸血鬼のことを、親と呼ぶ。
顔をしかめた。
自動小銃を持った赤い髪の男が近づいてきた。
吸血鬼対策課戦術部隊のビル・カークランドはいった。屋敷の周りはビル・カークランドの部下が取り囲んでいる。
通りに止めてある馬車の中から、人が一人、入れるぐらいの縦長の鉄の箱が運ばれていた。
女が鉄の箱をなでながら言った。
パメラは笑った。
パメラが留め金を外すと、箱の上部に小さな窓が開いた。
顔をしかめた。
エドワードは杭打ち銃を構えた。
イーサンは手に何も持っていなかった。
両手を広げた。
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