第二十八話、痕跡
文字数 2,064文字
ジム・ハモンドの病室を捜査したところ、微細な魔力反応が残っていた。付近を捜査したところ、北へ五百メートルほど離れた空き家で、ポーラ・リドゲードが潜伏していた痕跡が発見された。
空き家の床下に三メートル四方の穴を掘り、そこに布団や雑誌などを持ち込んでいた。逃走用に、近くの下水道に続く穴まで掘っていた。所有者を調べたが、ポーラ・リドゲードとは無関係だった。
ジム・ハモンドは、すぐに別の病院へうつされた。
イーサン・クロムウェルは床下につくられた居住スペースを見ながらいった。イーサンとエドモンドの二人は、ポーラ・リドゲードがしばらく潜伏していた病院近くの空き家に来ていた。
第七分室に所属していたジム・ハモンドのかつての上司が、ジム・ハモンドの病室に見舞いに来ていた。その時に、追跡用の使い魔を、その上司に張り付かせていたのではと推測されている。その上司は、第七分室で発生した毒ガスで命を失っていたため、事実を正確に確認することは難しかった。
「いくら報復したところで、人の数は多いし、自分が見つかるリスクが増えるだけだ。報復は、あまり意味がないということに、いずれは気づくだろう。でもまぁ、話し合う機会なんて、たぶん訪れないだろうから、考えても無駄だろうね。その辺は個性の問題だね。我々としては、いつもの仕事をするだけだよ」
敷地内の構造を思い浮かべた。わざわざ堀を飛び越えて庭から入る理由が、エドワードには思いつかなかった。
驚いた表情を見せた。
庭の草むらの足跡らしきくぼみをイーサンは指さした。塀の向こうには、別の家がある。
ため息をついた。
「近くの不動産屋が所有している物件だから、店舗に貼り付けてあるチラシを見れば、この空き家の情報を簡単に手に入れることができる。普通に歩いて探したんだろう。土地勘があって、たまたま知っていた可能性もあるが、そこから何かをたぐり寄せるのは、望み薄だね」
顔をしかめた。
頭をかいた。
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