第三話、バー
文字数 1,336文字
短く刈り込んだ灰色の髪に、首には、つなぎめのない銀色の首輪が巻かれている。イーサン・クロムウェル、九百年吸血鬼として生きた元吸血鬼である。赤い、ワインを一口飲んだ。
イーサンは首輪をなでた。
「力を与えるということは、己の力が弱まるということだ。何を成すにしろ夜のあいだの吸血鬼は大概のことは一人でできる。昼間は、何人吸血鬼の仲間がいようと、役にたたない。若い吸血鬼を増やしても、あまり意味のあることとは思えないがね」
血を吸い、己の血を分け与える。それによって、新たな吸血鬼が生まれる。血を分け与えた方は、その分弱体化することになる。
イーサンは笑った。
モーリスは自分の肩を揉みながら言った。
笑った。
イーサンはこの話を切り上げようとした。
モーリスはイーサンを見つめながら笑みを浮かべた。
イーサンは言った。
バーンズは、二人分の支払いを済ませ先に店を出た。
残されたイーサンはグラスに残ったワインを飲み干した。
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