第三十六話、八人目の客
文字数 2,059文字
次の日、午後を過ぎた時間に、エドワード・ノールズは第九分署に出勤した。
シャロン・ザヤットがエドワード・ノールズの肩を叩きながらいった。
エドワードは得意げな顔をしながら答えた。
笑った。
第九分室の課長であるブライアン・フロストがいった。
頭をかいた。
エドワードは銃を構える仕草をした。
「ただ、どうやって出て行ったのかわからないんですよ。出口は二カ所、バーの出入り口と、店の従業員用の裏口です。バーの出入り口近くには強盗の死体が転がってましたし、俺もその近くに居たんです。さすがに出て行こうとする客が居たら止めますよ。従業員用の裏口に行くためには、カウンターを乗り越えないとだめです、店長も居ましたし、そこも気づかれずに出て行くことは難しいです。他の客や店長に聞いても、店から出て行った客を誰も見ていないんです。どうやって出て行ったのかわからないんですよ」
エドワードは頭をかいた。
イーサン・クロムウェルがいった。
「ああ、それな、駅前近くの銀行を襲った後、逃走用に用意していた馬車に乗り込んだそうだ。そいつが、フィルクス通りの交差点で縁石に乗り上げ、横転しちまった。それで、金が入った鞄を持って逃げた。その後、疲れたのか、一端隠れようとしたのか知らんが、バーに入ってきたわけよ」
「そこだよ。そいつが強盗の仲間で、何か計画があって、そのバーに集まったってことになると話は変わってくる。それで、消えたってことになるからな。とはいえ、仲間だったら、グラスを投げて俺を助けてくれるのはおかしいし、カネ持ってバーに集まる理由もないんだよな」
シャロン・ザヤットがグラスを持ち上げるジェスチャーをした。
笑った。
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