第十八話、山狩り
文字数 1,745文字
デラウェンに戻り、山にいるであろう吸血鬼の捜索を手伝ってほしいと、オーガスに頼んだところ、オーガスは、二つ返事で引き受けた。
懐に忍ばせている拳銃を握りながら言った。
次の日、オーガスは手下を五十人ほど、かき集め、馬車に乗ってピリオーネまで来た。
エドワードはギャング達の前で話した。
オーガスは、ライフル銃を肩に担いでいた。他のギャング達も、武装していた。
「あわよくば、自分たちの手で始末を付けてしまおうなどと考えているかもしれないが、素人が吸血鬼を滅ぼすことは難しい。吸血鬼が、何の備えもしていないと思うかね。日があるからこそ、吸血鬼は警戒している。罠や逃げ場を用意している。命の危険を感じた吸血鬼は、苛烈になる。日のあるうちに仕留められなければ、報復を受けることになる。君らの組織は皆殺しだ」
オーガスは肩に担いでいたライフルをおろした。
オーガスの手下をいくつかの班に分け、山を探索させた。
付近の住民は、また地上げ屋の連中がやってきたといやそうな顔をした。
夜、レイヴァン・アスカルは腰をかがめ地面の匂いをかいでいた。
人の匂い、たばこの匂いがした。
不快そうな顔をした。
山の中を走りながら匂いをかいだ。いくつか広がるように匂いが漂っていた。ふもとの村や集落をのぞいてみたが、ギャングどもの気配はない。
土地を見に来たのか、それとも、吸血鬼である己を見つけに来たのか。
夜の山で、レイヴァン・アスカルはうろつきながら、悩んだ。
イーサンとエドワードは、山の川辺で休んでいた。水の音が涼やかだった。
エドワードは岩の上に座って汗をぬぐっていた。
「二人で、この広い山の中を調べるわけにもいかんだろ。山に行って帰ってくるだけでもずいぶん時間を食う。そんなことをしていたら何週間も、かかるよ。そうなると、どのみち気づかれる。仮に逃げられたとしても、こんな山の中を調べるより、他のところに逃げてもらった方が、探しやすいさ。山の中を歩き回って吸血鬼を探すなんて、私の体力が持たないよ」
年寄りなんだ。イーサンは腰を叩いた。
昼を少し過ぎたところで、イーサンとエドワードは集合場所に戻った。湖の近くでキャンプ地になる予定の場所だ。
オーガスがすでに帰ってきており、イーサンとエドワードを呼んでいた。
イーサンとエドワードが近づくと、オーガスは手に持ったものを見せた。
人間の頭蓋骨だった。
エドワードは頭蓋骨を眺めながら言った。
斜面の窪地に頭蓋骨が一つ上を向いていた。その周辺を掘り出すと、骨がいくつも出てきた。
エドワードはオーガスを見た。
おどけた表情を見せた。
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