第二十三話、マンション
文字数 2,510文字
エドワード・ノールズとイーサン・クロムウェルは、ケネステック通りのマンションに来ていた。逃げた吸血鬼、ポーラ・リドゲードが住んでいたマンションである。
石造りのマンションで、周囲に古い建物が多く、なじんでいた。
二人は、マンションの階段を上った。一、二階に住んでいた人間は全員退避しており、ここにはいない。
三階に至る階段をのぼりながらいった。薄暗く重々しい。
エドワードは頭をかしげた。
三階の階段を上り、奥の部屋へ進む。真ん中に廊下があり、その両脇に部屋があった。
マンション内には不自然なほど通気管が張り巡らされていた。
ポーラ・リドゲードが居た部屋の前に来た。ドアノブのないドアを開け室内に入る。かすかな血の臭いと硝煙の匂いがした。イーサン・クロムウェルは唇を舐めた。
部屋の隅、壁や床に無数の銃弾の跡があり、へしゃげた銃弾がめり込んでいた。耐吸血鬼用に貫通力よりも、体内でつぶれ、より多く体を傷つけることができるような弾頭を使っている。
エドワードは頬を膨らました。
火災現場などで使われているマスクである。顔を覆う密閉されたマスクに長いチューブを二本通し、外の空気が吸えるようにしている。
部屋の窓を見ると、外の様子がよく見えた。窓を覆っていた板は剥がされ、窓は窓枠ごと無かった。
「風通しに関してはずいぶん改善されたようだね。外で待機していた別部隊によれば、毒ガスの報告があった後、十分ほどしてから、室内で動きがあったそうだ。昼間、これだけ銃弾を浴びせられ、十分で動けるようになるとすると、再生力の高い血筋かもしれないな」
エドワードは感心したようにうなずいた。
「割と綱渡りだったのではないかな。洋服ダンスが側溝の近くに落ちなければアウトだったろうし、洋服ダンスが壊れる可能性もあった。煙幕と洋服ダンスで日光を防いでいたとはいえ、地面からの反射光は入ってくる。側溝の中も快適とは言いがたい、所々光が入ってくる。体を焼かれながら溝の中を進んだんだろう」
側溝の中には、焼け焦げた皮膚がへばりついていた。
外に待機していた部隊があった。銃弾と日光、同時に浴びればさすがに動けなくなる。
イーサンは肩をすくめた。
(ログインが必要です)