第十五話、ギャング
文字数 2,649文字
吸血鬼対策課、第九分室、夕方、そろそろ帰ろうかと、エドワードが帰り支度をしていたところ、室長のブライアン・フロストに呼び止められた。
マローファミリーは、元は戦争中に軍需物資の横流しをしていた連中である。それが集まり、今は非合法な活動で組織を大きくしている。
エドワードは昔、組織犯罪対策課にいたので、ある程度知っている。
頭のいい男で、合法非合法、両方の商売を手広くやっていた。
やっかいな男で、なかなかしっぽを出さなかった。
ブライアン・フロストも帰り支度を始めた。
翌日、イーサンとエドワードはラソテッド西部のデラウェンに来ていた。テレーズ市から汽車で三十分ほど行ったところにある古い町である。
駅から出ると、商店が建ち並んでいた。
十年ほど前に駅ができたことにより、町の開発は進んだ。
ギャングのことをイーサンは、よく知らなかった。ギャングという概念自体ここ最近できたものだった。
二人は警察署に向かった。
デラウェン警察署は、三階建ての比較的新しい建物だった。
二十年ほど前に発表されたデラウェンを通る鉄道計画を受け、人口増加を期待した当時の市長が、警察や消防、病院などを増やした。その結果である。
二人は警察署の中に入り、二階にある組織犯罪対策課とかかれた部屋を尋ねた。
その中の一人に声をかけた。
ラリーは苦笑いした。エドワードはギャングから金をもらい情報を渡していた上司を殴り移動になった。
イーサンとラリーは握手した。
ラリー・ジョイスは二人を隣の応接室に案内した。三人は革張りのソファーに座った。なかなかいい座り心地だった。
ラリー・ジョイスは膝を叩いて笑った。
イーサンは下唇を舐めた。
「十日ほど前の話だ。夜の十時頃、犯人は屋敷の壁をジャンプして飛び越えた。知らなかったのか、壁には警報装置が取り付けられていて、それで見つかっちまった。ギャングの手下どもが警報装置が鳴った場所に集まったが、誰もいない。窓ガラスが割れる音がして、上を見ると、二階の窓が割れていて、中に入る男の背中が見えたそうだ。それで追いかけた。二階にも手下がいたが、手下は胸を拳で殴られ死んだ。ロイ・オズボーンがいた部屋に犯人は扉を壊し入った。遅れて、家の中に入った手下は二階に上がった。階段を上がったところで、男がいた。左手にロイ・オズボーンの首を掴み、右手には、タンスがあった」
「ああ、百キログラムぐらいあるんじゃないか。なんにしろ、それを投げてきた。廊下にいる手下に向かってな。一人死んで、二人は重傷、後の一人は、びびって動けなくなった。そりゃあな、タンスを片手で投げてくる相手に勝てるとは思えないよな」
最近そんな話を聞いたなと、イーサンとエドワードは顔を見合わせた。
(ログインが必要です)