第十七話、山
文字数 1,817文字
小さな湖がいくつかあり、小高い山が連なっていた。
エドワードは辺りを見渡しながら言った。
イーサンとエドワードの二人は、ラソテッド西部のデラウェンから、さらに西、ピリオーネに来ていた。
オーガスの話によると、リゾート施設を作る計画があり、その地上げに、マローファミリーは内々に関わっていたそうだ。
エドワードはため息をついた。
イーサンは吸血鬼時代に作ったコインを使って、吸血鬼が放つ魔力を探知することができる。
樹木が生い茂った山々が広がっていた。
イーサンは心底いやそうな顔をした。
夜。
レイヴァン・アスカルは、つぶやいた。虫の声や魚の跳ねる音、風の音が辺りに広がっていた。近くの村で夜中まで騒いでいた薄汚い男達の声は、ずいぶん前から聞こえなくなった。
最初は、失敗だった。
ロイ・オズボーンにあって、話を付けようと堀を飛び越えたら、塀に警報装置が仕掛けられていたようで、すぐに見つかった。あわてて、二階に飛び上がり、中に入り、二階にいたなんだか偉そうな顔をした男を捕まえた。話を聞くと、ロイ・オズボーンだった。タンスを部屋の外にいる連中に投げつけ、ロイ・オズボーンにピリオーネの地上げをやめるよう、話すと、「お前あそこに住んでいるのか」と、言われ、頭が真っ白になった。住んでいる場所を知られるのはまずいことに気がついた。
うまく返事ができず、どうしていいかわからなくなり殺した。
かなり困った。
地上げをやめろというと、住処がばれてしまう、かといって、地上げをやめさすためには地上げをやめろと言うしかない。しばらく悩んだすえ、全部殺してしまえば、いいじゃないかと、思いついた。
美しい夜空が広がっていた。
イーサンとエドワードは、朝と夕、日に二度ほど出る馬車に乗って、近くの町からピリオーネに通った。三日ほど、辺りの集落をコイン片手に歩き、怪しい人物の目撃情報を住人に聞いた。この辺りの人間は、顔見知りばかりで、夜にしか顔を見せない住人がいるという情報はなかった。ただ、夜中に時々、山の辺りで高速で移動する生き物を見たという証言があった。
段々畑のあぜ道を歩きながらエドワードが言った。
だが、その度に人が一人死んでいる。
いやそうな顔をした。山が広々と広がっている。
イーサンは左の眉を上げた。
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