第十六話、下っ端
文字数 3,644文字
トム・ターナーは言った。
イーサンとエドワードの二人は、ラリー・ジョイスの話を聞いた後、ミグラス市警に寄った。
サイモン・ローリーが働く警備会社に聞き込みに言ったとき、警備員の胸元に名札が縫い付けられていたことをトム・ターナーは思いだした。
「おそらく、ギャングの生き残りが、制服の名札を見たのだろう。そのことを警察に隠して、ギャングどもは杭とハンマーを持って、サイモン・ローリーを滅ぼそうとした。その結果、夜勤帰りで寝ていたサイモン・ローリーは、杭を打たれて死んでしまった」
トム・ターナーは笑った。
レイヴァン・アスカルは己が着ている服を見ながら言った。所々穴が空いており、至る所に血痕がついていた。返り血と銃で撃たれた穴だ。
レイヴァン・アスカルは穴が空き血がこびりついた警備員の制服を脱ぎ捨てた。
エドワードは、マローファミリーの事務所をのぞき見した。ラリー・ジョイス、イーサン・クロムウェル、エドワード・ノールズの三人はマローファミリーの事務所の近くに来ていた。
事務所の周りには柄の悪い連中がうろついていた。
この辺りでまだ襲われていない事務所はここぐらいだった。
エドワードは肩をすくめた。
三人はマローファミリーの事務所に向かった。
四階建ての真新しいビルに近づくと、男達が警戒した様子でイーサン達を見た。
ラリー・ジョイスが身分証明書を見せると、ビルの三階の応接間らしきところに案内された。
ソファの上には長髪の太った男が座っていた。
オーガスと呼ばれた長髪の太った男は、いやそうな顔をした。
わざとらしい笑みを浮かべた。
オーガスは、ソファーに、もたれかかった。
「はっはっ、吸血鬼に狙われているからって、縄張りを空けるわけにもいかねぇよな。昼はいいが夜はどうするんだ。トラブルが起きたときに、吸血鬼が恐くて事務所にいませんでしたじゃあ、みかじめ料をもらっているのに、メンツが立たないよなぁ」
オーガスはイーサンとエドワードを見た。
オーガスは前のめりになった。
オーガスは押し黙った。
ラリー・ジョイスは、この機会に組織の全貌をできる限り引きずり出す気だった。
オーガスは答えた。
エドワードはラリー・ジョイスの脇腹を肘で突いた。
オーガスは顔をこわばらせた。
イーサンは胸元を指し示した。
オーガスは、にらみつけた。
投げやりに答えた。
ラリーとエドワードは嘘をつけと、あきれた顔をした。
目をそらした。
オーガスは顔をゆがめた。
笑った。
オーガストは押し殺したような声を出した。
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